Concarneau,_France

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、域外からの緊急性の低い観光客らに対する入域制限を6月を目途に緩和する計画を明らかにしました。同計画では基本的にEUが承認したワクチンの最終投与を旅行の少なくとも2週間前に受けた人は誰でも入域できるとしています。

 フォンデアライエン同委員会委員長は「EUの観光産業を復活させ、国境を越えた友情を安全に復活させる時が来た」とツイートしました。新型コロナウイルスの感染流行で停滞するEU経済の再生に観光産業の復活への期待が込められた緩和計画です。

 EUは現在、旅行者の入域を認めているのは7か国しかなく、その開放にはリスクも予想されます。そこで今回の計画には域内で変異株などの感染急拡大や域外諸国での感染悪化が認められた場合は、緩和措置に「緊急ブレーキ」をかけることも含まれるとしています。2週間ごとに状況を分析し、措置は見直されるそうです。

 EUは国民の5割近くが1回目ワクチン接種を終え、新規感染者数が大幅に減少している英国に比べれば、国民の20%程度しかワクチン接種が進んでいません。毎日の新規感染者数もフランスなどは2万人以上の状態ですが、今後、一気に接種が進むと予想されています。

 英国はパンデミックを抑え込んだことで、先進7か国(G7)首脳会議の開催にこぎ着け、世界にアピールし、入国制限の緩和も発表しています。EUはその段階ともいえませんが、域内外の往来を緩和することでインバウンド経済効果が得られるだけでなく、今夏の長期ヴァカンスで国外にEU市民が出られるかもしれないという期待も高まっています。

 EUはすでにワクチン接種を受けている場合や、PCR検査で陰性である場合、さらには感染症から最近回復した人を対象にデジタル証明書を発行する計画を発表しています。欧州委員会は今月3日、条件を満たす域外からの旅行者は、域内の移動も可能になるとの考えを示しました。

 さらにワクチンを接種できない子供は、到着時に検査が必要になる場合があるとする一方、検査結果が陰性なら、保護者とともに旅行は可能としています。また、世界保健機関(WHO)の緊急使用承認プロセスを完了したワクチンにも適用される可能性があるとのことです。

 EUは、ワクチン接種完了や免疫獲得を証明するデジタルグリーン証明書を発行予定ですが、欧州委員会は、各国は「国内法に基づいて域外で発行された証明書も受け入れるよう調整中」と述べ、最終決定には「証明書の信頼性、有効性、整合性、および関連するすべてのデータが含まれているかどうかを検証する機能」が含まれるとしています。

 EUが承認しているワクチンは、米ファイザー・BioNTech、米モデルナ、英オックスフォード・アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンの4つのワクチン。WHOによって緊急使用が許可されているのは中国のシノファーマ、シノバックについては、今後数日から数週間でEUは承認すると予想されています。

 問題は域外で発行される証明書やデジタルグリーン証明書の信頼性です。すでに域内でさえ、検査のずさんさが指摘されており、高額でネットで売られる偽証明書も出回っています。EUとしては頭の痛いところですが、偽パスポート排除システムと同等かそれ以上のシステムを構築する必要があります。

 英国や日本のような島国と異なり、アイルランドを除く26か国が国境を接するEUでは域内に入れば、入国手続きなしに移動は可能です。そのことがウイルス拡散に繋がっています。欧州委員会が1年前、その深刻さを見極められず、域外からの入国を完全にシャットダウンしなかったことが、深刻な感染拡大に繋がりました。

 水際対策が容易でないEUにとって域外からの入国規制を緩和することは大きな賭けともいえます。それに観光収入への経済依存度は全加盟国の平均は1割を切っています。それでもインバウンド推進がEU経済復活には重要との考えです。

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