
トランプ前政権が自国第一主義を打ち出した結果、国益重視、脱グローバル化の意識が世界に拡散しました。無論、国益を無視したグローバル化はなく、特にグローバル企業が国家に貢献する姿勢を忘れ、多国籍化し、租税回避に動くのは企業の奢りといわざるを得ません。
その象徴はグーグルやアップル、フェイスブックなど米巨大IT企業が欧州連合(EU)内で最も安い法人税を課すアイルランドに欧州本社を置き、他の加盟国で得た利益をアイルランドでだけ納税していた問題は、EUに不快感を与えました。福祉大国の欧州各国にとっては税収には敏感です。
では、ポストコロナのグローバル化の行方はどうなるのでしょうか。方向としては政治的には国益を重視し、安全保障に関わる製品の国内生産などに力を入れつつも、自由貿易を促進することで経済再生に向かっており、グローバル化は形を変えつつも停滞することはないでしょう。
コロナ禍で露呈してサプライチェーンの寸断で、グローバルリスクマネジメントの重要性が高まり、地産地消的な考えがより注目されていますが、ローカリゼーション重視はコロナ禍以前から進められていることです。そのローカリゼーションで重要な視点は地域貢献です。
たとえば、インドの乗用車市場でシェア首位を誇るスズキは、新型コロナウイルスの感染急拡大で治療用の酸素需要が高まり、生産に酸素を必要とするスズキは生産を1時停止しました。今は酸素を使わない方法で操業再開していますが、スズキのインドでの雇用を守るという意味では努力しているといえます。
同時にインドの巨大市場で儲けさせてもらっている日本企業が、世界一感染拡大が進むインドの深刻な状況に対して、酸素を医療施設で使ってもらうために操業停止し、雇用を守るために酸素を使わない生産方法を見出す努力は立派と言えます。
コロナ禍で海外進出しているグローバル企業の多くは、カントリーリスクに遭遇し、今も悪戦苦闘中です。しかし、だからといって海外からの撤退に動き出す企業が急増しているというわけではありません。ただ、カントリーリスクが発生したことで国家の存在の大きさをひしひしと感じていることでしょう。
通常はビジネス活動に制約を与えるのは独裁国家や権威主義国家、政治的に不安定な国でしたが、コロナ禍は政治的に安定した民主主義国家でも感染抑制に苦戦し、ビジネスに影響を与えています。実際、その政府の判断によっては事業継続が困難になる事態も発生しています。
今年は、グローバル戦略の徹底した見直しで体制を立て直す企業も増えてくるでしょう。よりグローバルリスクに強い企業の再構築が期待されていると言えそうです。
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