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 ヨーロッパでは連日、モロッコの地中海に突き出たスペイン領セウタに何千人ものモロッコ人や他のアフリカ諸国からの人々が泳いで不法流入しているニュースが報じられています。ある人は家族と別れを告げ、ある人は大して泳げず、命がけでスペイン側にたどり着き、大半は強制的にモロッコに追い返されています。

 北アフリカ・リビアからイタリアに渡るルートも閉ざされ、その前のトルコからギリシャ経由も困難になり、セウタに今はヨーロッパをめざす移民が集中しています。彼らの目的はただ一つ、ヨーロッパで働いて家族を養うことです。

 8,000人以上の移民が北アフリカのスペインの飛び地セウタに入るところに、今はスペイン軍が動員され、約半分が送り返されていると報じられています。モロッコ警察は19日、これ以上の移民がセウタに向かう試みを防ぐために国境地域を封鎖したといっています。結果的にセウタから追い返されモロッコに再入国する男たちが列をなしている状況です。

 4月、スペインはモロッコ政府の頭痛の種となっている西サハラの指導者ブラヒムガリがスペイン領土内で新型コロナウイルスの感染治療を受けることを許可しました。彼はモロッコの主張に対してポリサリオ戦線を率いて西サハラの主権のために戦う指導者で、モロッコ政府はスペインの判断に怒りを露にしました。

 報復として、モロッコは陸続きで国境を接するセウタで移民たちがスペイン領に入ることを黙認したことで、雪崩を打ってセウタにヨーロッパを目指す人が殺到したわけです。この流入には若い男たちだけでなく、女性や子供を含む家族も含まれています。死者も出ています。。

 18日には、スペイン政府はセウタの国境警備隊を支援するために軍隊を派遣し、幼い子供たちの救助を始めました。もう1つのモロッコのスペインの飛び地であるメリリャでは、18日にサハラ以南のアフリカ人86人が南の桟橋から入り、数百人の移民が治安部隊によって侵入を阻止されたと報じられています。

 観光が大きな収入源になっているモロッコでは、コロナ禍で観光業が大打撃を受け、失業者が急増し、路上生活者も増えていると報じられています。スペインのサンチェス首相は移民を追い返すことに必死で、欧州当局もスペインを支持しています。

 セウタとメリリャは17世紀以来、スペインの支配下にありましたが、現在に至るまでモロッコは領有権を主張しています。セウタやメリリャに入りさえすれば、欧州連合(EU)内のシェンゲン協定で域内は自由に移動が可能です。

 一方、西サハラはモロッコが併合した1975年まで、スペイン領でした。西サハラの主権を主張する先住民サハラウィー人の指導者ブラヒムガリ(73歳)がスペインで新型コロナウイルスの治療を受けることは、モロッコにとっては敵対行為です。そのモロッコもセウタやメリリャのスペインからの奪還で戦い続けています。

 スペイン政府は今回、モロッコが国境問題を利用して政治的圧力をかけていると批判し、特にモロッコの国境警備隊が移民の通過を止めていないことを挙げています。

 セウタに到着した人々の大多数はモロッコ人ですが、メリリャにはモロッコ北部のサハラ以南の移民も集結しており、彼らは今、これまでのルートだったリビア沿岸からイタリアのシチリア島などのルートが困難になり、大西洋を越えてカナリア諸島に至るなど、スペインに至るルートを探しています。

 すでにEU国境警備機関(Frontex)は、スペインのカナリア諸島(モロッコ沿岸沖)への不法移民が今年急増したと報告しています。ただ、今年これまでにヨーロッパに到着した不法移民の総数は、2015年から2016年に見られたレベルから見ればはるかに下回っているといいます。

 スペインでは不法移民流入に危機感を抱く住民による抗議デモも起きており、政治的解決が急がれていますが、EUが本腰を入れてアフリカ支援を行わなければ、コロナ禍後、地中海が修羅場と化す日も遠くないといえそうです。

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