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  次期ルーヴル美術館館長ロランス・デカール氏 by archyde.com

 今月19日、半年以上閉館していた世界最大規模のフランス・パリのルーブル美術館が、厳しい規制のもとで開館しました。これだけ長い閉館は第2次世界大戦時以来初めてのことで、観賞者がいない静寂の美術館で展示されている膨大な数の作品群は、ひたすら来館者を待ち続けた感があります。

 閉館中に改修工事を行い、ピカピカの状態で再開館した同美術館は、9月1日に新しい館長を迎えます。それもルーブル美術館史上、初の女性館長です。マクロン仏大統領が任命した次期館長、ロランス・デカール氏(54)は、能力、実績、ビジョンにおいて申し分がないと仏メディアは絶賛しています。

 デカール氏は現在、パリのオルセー美術館の館長を4年務め、オランジュリー美術館の館長も務めています。彼女はジャーナリストで作家のジャン・デカール氏の娘であり、小説家のガイ・デカール氏の孫娘という背景にもつい目がいってしまいます。

 パリ大学ソルボンヌ校とルーヴル美術館付属大学で美術史を学んだ後、パトリモワン国立美術館で職歴をスタートさせています。美術史家としての顔も持つ彼女は、1994年にオルセー美術館のキュレーターとして最初の役職に就き、米メトロポリタン美術館、英ロンドンの王立美術館、スペイン・マドリードのティッセン美術館などの国際的な美術館と協力していくつかの展覧会を手掛けています。

 2007年にフランス美術館庁の科学ディレクターに任命され、中東のルーヴル・アブダビの開発プロジェクトを担当するオペレーターに任命され、2011年に一般遺産学芸員に昇進し、キャリアを重ねてきました。

 19世紀から20世紀初頭の芸術を専門とする近代美術史家としての評価を受けながら、同時に美術館に多くの若者が来館するよう工夫を凝らし、ナチスによって略奪された作品の返還、また現代的テーマの企画展も手掛け、成功を収めてきました。

 デカール氏が館長を務めるオルセー美術館は、「ブラックモデル」などの野心的な企画展をいくつも実施し、来館者数を増やし、2019年には370万人の来館者があり、国立美術館として自己資金率を64%にまで押し上げた実績があります。

 彼女が率いるオルセー美術館はルーブルとともに新型コロナウイルス感染拡大の中、半年以上、閉館を強いられましたが、「オルセー・ワイド・オープン・プロジェクト」で、米国の常連客から2,000万ユーロ(約26億8,000万円)の寄付金を集め、閉館中に展示スペースを拡張し、650屬龍軌薀札鵐拭次2024年に開設される国際研究センター設立などに取り組んできました。

 フランスには2つの大きな政治思想が流れており、1つは大革命前からのカトリックと君主専制主義の伝統を重んじる保守主義で、今は影を潜めています。もう一方に大革命を礼賛し、近代化の成功を自負するリベラル派です。マクロン氏は中道といいますが、リベラルに属します。

 デカール氏が専門とする19世紀から20世紀初頭の美術は、革命後の19世紀の近代の萌芽の中で権威に寄り添う伝統的美術が印象派などの自由な芸術に取って代わられフランス美術史上最も激変した時期です。明治維新期の日本は、その美術の潮流の影響を受け、互いに刺激し合った歴史があります。

 2018年に史上最多の年間1,000万人の来館者を記録したルーヴルは、新型コロナウイルスのロックダウン(都市封鎖)で閉館状態でしたが、障がい者教育を含めたプロジェクトなどが目白押しです。

 デカール氏は、メディアに対して、新しい世代を引き付ける美術館構想を熱く語っており、「すべての年齢、すべての社会・文化的背景を持つ来館者を迎える美術館にしたい」とヴィジョンを熱く語っています。さらにナチスによって略奪された美術品の持ち主への返還などにも積極的に取り組む意欲を見せています。

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