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 昨年の東芝の株主総会で不審な行動があったというニュースは、もしかしたら日本よりは海外の投資家の方が注目したかもしれません。なぜなら、外国の物言う株主(アクティビスト)を撃退するために政府と結託していた事実が、なんだか古い夢を見させられているような状態だからです。

 1980年代、台頭する日本企業は当時、米国から強いジャパンバッシングを受けました。私自身も米国で取材を繰り返しましたが、批判の矛先は日本政府、とりわけ、通産省と企業の結託による不公正な貿易慣習、特に外国人には理解できないさまざまな規制が米国をいら立たせました。

 それは今でいう中国への米国のバッシングにも通じるもので、特に物言う株主を黙らせるための総会屋の悪習は、世界的な批判を浴びました。当時は米国からの日本企業の技術盗用も問題視されました。通産省が経済産業省に名前を変えたのも、その批判をかわす狙いもあったといわれています。

 海外メディアの今回の東芝による不祥事に対する視点は「東芝が政府と結託して」という点です。中国が不当な補助金で公正な貿易を妨げていることへの非難と変わりません。自国の146年続く大手でにメーカーを政府が不当な方法で守ろうとしたことは、国際的にはルール違反です。

 たとえば、不透明なガバナンスを批判された企業が、社外監査役を増やすのに、会社の意向をしっかり忖度する役員を登用し、対外的に形ばかりの改革を行うことで、株主などのステークホルダーの目を欺くことは、残念ながら日本ではよくあることです。

 しかし、政府がそれに目をつむるとなると、政府の罪は大きいといわざるを得ません。ところが政府は民間企業の関係者が解任、あるいは辞任させられ、背任行為で訴えられるのとは違い、公務員の関係者の処罰は法律で守られているため、うやむやです。

 今は若い世代は、東芝がかつてノートパソコンで世界シェア1位だったことを知らないようですが、東芝ブランドはノートパソコンだけでなく、テレビのブランドとして世界的に有名でした。日本の技術力を世界に知らしめた代表的な企業ですが、不正経理問題などで近年、日本国内だけでなく、世界からも厳しい目が向けられています。

 経営が弱体化すれば、今の時代は海外の強力な投資家の買収ターゲットにされるのは自然の流れで、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)などの有力経済メディアは、その時が来ていると指摘しており、海外投資家に経営が移る日もあるのかもしれません。

 事件は、昨年の定時株主総会までの経緯を調べた外部弁護士による調査報告書で明らかになりました。「東芝が不審な戦術を使って、外国の物言う株主を撃退するために政府と結託していたことが判明した」とWSJは伝えました。

 「東芝が、不当な影響を与えることにより株主の権利行使を事実上妨げようと画策したと認められる」とし、シンガポールを拠点とするヘッジファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントが提案する候補を東芝の取締役に就任させることができず、前最高経営責任者(CEO)が僅差で再選された事実について「衝撃的な内容が暴露された」と報じました。

 6月25日の今年の定時株主総会を控え、同社は今月13日に、執行役2人と社外取締役2人の退任を発表しましたが、十分ではないといわれています。東芝は2017年に米原子力事業の破綻を受け、53億ドルの資金調達を行った結果、外国の株主が半数以上の株式を保有するようになりました。

 当然ながら、今回の独立調査の実施も外国勢の株主が主導したもので、不正な戦略が明らかになりました。WSJは「多くの問題を抱える同社について、株主還元を増やすか、最終的には身売りする必要があるというのが市場の見方だが、これは十分論理的だ」と指摘しています。

 2017年の不祥事以降、東芝の株価は上昇し、東芝の公正価値は現在の水準より35%高い1株当たり6500円だという専門家もいます。当然ながら、外国投資家の注目度は高く、買収攻勢も激化が予想されます。東芝は防衛関連や福島原発の処理に関わっており、安全保障上の問題をクリアする必要がありますが、身売りの危機に晒されているのは事実でしょう。

 果たしで都合が悪くなれば政府の助けを裏で借りることを含め、悪習を絶ち、完全に膿を出して再生することができるのか、世界中が注視しています。

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