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 20日に実施されたフランスの地域圏議会選の第1回投票で、マクロン大統領の与党・共和国前進(LREM)は、全国の得票率の約11%で惨敗しました。一方、ルペン氏率いる右派・国民連合(RN)も19%と予想を下回り、トップに立ったのは、野党・保中右派の共和党(LR)で27%でした。

 社会党や環境政党の後塵をなめ、5位になったLREMの苦戦は当初から予想されていたことですが、2位のRNは、前回2015年の地方選挙から7ポイントも減らしたことは予想外でした。2017年の前回の大統領選、国民議会選で圧勝したマクロン氏とLREMが劣勢に立たされているのは確かといえそうです。

 既存大政党の候補者を嫌い、若き30代のマクロン氏を支持し、自身の立ち上げたLREMも圧倒的な議席を獲得し、多くの有権者は、マクロン氏率いる政党に国政を任せたわけですが、今ではLREMは離党議員が続出し、過半数割れし、マクロン氏の支持率も低迷しています。

 無論、地方選挙は国政選挙とは異なる要素はありますが、それでも第1回投票での5位はつらい結果です。原因の一つは、コロナ禍で疲弊する地方が多く、今後のコロナ復興を考えても熟練したプロの政治家が必要との判断があると見られます。それと第1回投票の投票率が40%を切る低さだったことも影響しているでしょう。

 マルセイユでは投票時間開始の8時に開かない投票所が6か所もあり、朝一番に投票しようとした高齢者が返ってしまうハプニングも起きました。さらにフランスは新型コロナウイルスの厳しい感染対策が解除され、開放感に浸る国民(特に若者の80%が投票に行かなかった)から選挙への関心が遠のいたことも影響したでしょう。

 一方、予想を下回る苦戦を強いられるRNは、今回はなんとか全国数か所の地域圏を制することを目指しており、投票前の世論調査でも優勢が伝えられていただけに、驚きもありました。比例代表制で10%以上の得票率のリストが第2回投票に進める仕組みですが、RNが首位なのは1か所だけでした。

 内務省の暫定開票結果では13地域圏のうち、LRなどが推す候補者リストが6地域圏で、社会党などの中道左派が推す候補者リストが5地域圏、ルペン氏率いる右派・国民連合は南仏の1カ所にとどまっています。以外に善戦したのが社会党だったともいえます。

 今回の地方選挙は来春に行われる大統領選挙の前哨戦と見なされ、世論調査で大統領選の決選投票に勝ち進む有力候補として、マクロン現大統領と国民連合党首のマリーヌ・ルペン党首の一騎打ちが予想されています。今回はその2人の政党がともに苦戦を強いられているといえます。

 マクロン氏の場合は経済政策では、さまざまな改革で一定の評価を得ているものの、コロナ対策は後手後手に回り、11万人もの死者を出しました。エリート独特の上から目線の発言や、強引な意思決定、金持ち寄りの政策などで支持率を落としています。

 一方、ルペン氏は国民連合の前身、国民戦線の創設者の過激な父親と違い、穏健で貧困層に焦点を当てた政策で確実に支持基盤を築き、今や極右政党とはいえない国政を担える政党への脱皮を果たしたともいえます。中道右派のLRなどは、国民連合との政策の違いを出すことに苦慮しています。

 ただ、フランス人の多くは前回の大統領選で、極右の大統領誕生阻止に動き、消去法でマクロン氏を選んだ経緯もあり、ルペン氏の苦戦が予想されています。それでも地域県議会の1つを制すれば、大きな影響を与えるのは必至と見られます。

 ビジネスマン出身で同じ時期の大統領のなったトランプ米大統領が失脚した中、マクロン氏が残れるかは、今からが本番です。

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