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 今月11日、誰もが目を疑う光景が世界に報じられました。それはデモなどのないはずのキューバで何千人もの市民がデモのために街頭に繰り出し、それも政府への不満をぶちまけたからです。その中身は62年間続いてきた独裁の終結を求めるものだったことは、さらに世界を驚かせました。

 この動きに対して、キューバとの和解を明確にしたオバマ政権の時と違い、バイデン新大統領は就任から半年の間、対キューバ政策で画期的なものは何も示してきませんでした。特にトランプ前政権が講じた渡航・送金規制の緩和を大きく前進させることもありませんでした。

 そのため、キューバでの抗議行動の広がりに対して、政治的メッセージを出すことを迫られているわけですが、バイデン氏は政治的に困難な見通しに直面し、カリブ海諸国のみならず、中南米、ひいては独裁体制を続ける国々もバイデン氏の出方に注目しています。

 デモは少なくとも15の都市で起き、市民の抗議デモに不慣れなキューバ政府も対応に追われている状況です。米国はキューバの民主化は願ってもないことですが、革命以来半世紀以上、専制政治を継続したキューバの想定外の変化への対応に行動が鈍っているようにも見えます。

 米ウォールストリートジャーナルのような保守系メディアは「近年、専制主義が優位に立っているように見える世界で、キューバの混乱は重要な問いを提示しています。その問いとは、専制主義政権が長期的に栄えるのか、それとも自らの崩壊に向けた種をまくことになるのかというものだ」と指摘しています。

 肝心のデモに参加しているキューバ人たちも、この抗議行動がどのような結果をもたらすのか怒りと不安の中にあると現地取材した西側メディアは伝えています。

 デモ参加者は食料難や新型コロナウイルスワクチンの不足などについて抗議しているわけですが、その抗議の矛先は、キューバ共産党の統治そのものへの不満に発展している模様です。

 今のところ、この前代未聞の市民の抗議行動の行方はまったく読めず、抗議者は超マージナルな民主化を求める1団で共産党政府が軍事力を行使して強圧的に鎮圧するのか、それとも反独裁政治の新たな潮流の始まりを示すものなのか、見極めは難しい状況です。

 あまりに長い共産党1党独裁でキューバ情勢を注意深くウォッチする西側メディアはなく、専制主義政権が限界に達しているという分析もできていない状況です。ただ、米国の自由と民主主義の拡大を目指す超党派の組織「フリーダムハウス」の報告では、世界全体での自由の度合いは15年連続で低下し、逆に「民主主義の長期的な後退は深刻化している」と指摘されています。

 特にコロナ禍への迅速な対応、国民統制による行動規制やワクチン接種で、専制主義体制の国の方が民主主義の国より圧倒的優勢でした。さらに昨年は、とりわけハンガリーなどの中欧や中央アジアの一帯などで、計18カ国で民主主義的傾向が後退したと指摘されています。

 その中でのキューバの想定外の市民の抗議行動は、大変興味深いものです。中国などの大国に比べ、小さな島国で統治が容易なはずのキューバで、権威主義は崩壊の危機にあるのか、自由と民主主義を信じる国々は、どう対処すべきなのかが問われています。

 バイデン氏は「普遍的権利を行使するキューバの人々を米国は断固として支持する。キューバ政府に対し、人々の声を封じ込めようとする暴力を控えるよう求める」と表明しました。さらなる行動が期待されていますが、多国間主義で外国の政治体制そのものを干渉しないバイデン政権の国際的リーダーシップが問われています。