コロナ禍で気候変動問題は、どこかで軽視されがちです。新型コロナウイルスは直接人間の命を脅かし、自分や周囲の人々の命をあっという間に奪う危険性があるのに対して、気候変動のリスクは気づかない間に地球を破滅に追いやる可能性があり、意識しなければ時間だけが過ぎ去ってしまいます。
欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は今月14日、フランスの革命記念日の日に2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的ゼロにするカーボンニュートラルに向け、ディーゼル及びガソリン車の2035年以降の新車販売禁止などを含む12項目の包括的気候変動対策「フィット・フォー・55」の提案を明らかにしました。
12項目にはジェット燃料への課税や低炭素代替燃料に対する10年間の免税期間、域外から輸入する炭素含有量の多い鉄鋼やアルミニウムなどに対する国境炭素税の導入なども含まれています。二酸化炭素(CO2)削減目標としては、自動車は2030年までに21年比で37・5%削減としていたのを55%削減とハードルを上げ、35年までにゼロとするためのスピードアップを打ち出しました。
世界初となる国境炭素税は23から25年を移行期間とし、26年から本格的に導入するとしています。EUよりも環境規制が緩い国からの輸入品に関税を課し、公平な競争を確保するとしていますが、すでに対象となる鉄鋼業界などは国際競争力の低下をもたらす可能性が高いと懸念を表明しています。
同計画が実施に移された場合、家庭の暖房費を押し上げるだけでなく、EUでのフライトのコストを増加させる可能性があります。人々は断熱材を増強し、家に他の長期的な変更を加える必要があり、その改装費用の財政援助も計画に盛り込まれました。
EUは1990年から2019年にかけて、CO2排出量を24%削減しました。現在、EUはわずか9年間でCO2をさらに31%削減する意思を表明しています。2050年までにカーボンニュートラルを実現するためには、今回のような大規模な包括的気候変動対策を実施するしかないというわけです。
「フィット・フォー・55」は、広範な分野でかなり困難な政策を実施する内容です。これまで環境問題に取り組んできた専門家たちは、その実施がいかに難しいか知っています。しかし、環境問題にこだわってきたEUは、世界をリードすることを諦めていません。
アメリカがこれまで避けてきた経済活動と気候変動問題を結び付ける考えが、今ほどグローバル経済の中心になりつつある時代はないといえるでしょう。それも1980年代後半から左翼運動の隠れ蓑になってきた環境運動を、的外れな政治運動から脱皮させ、人類共通の課題にする時代が来ています。
はっきりしていることは、「フィット・フォー・55」を見ても、ビジネス界だけでなく、個人も相当な負担を強いられる内容になっていることです。ビジネスなら利潤追求、個人なら自分の資産を守り増やすこととは環境政策は方向が逆にも見えることが長い間指摘されてきました。
EU気候政策チームのチーフ、ティメルマンス欧州委員会副委員長は「EU市民とさまざまな業界からのフィードバックを求める」とし、実現に向けたコンセンサス醸成に努力する構えです。欧州委員会関係者は「目的は、経済を止めることではなく、新しいレベルに置くことだ」と述べています。
太陽の光、綺麗な水と空気は、人類生存の生命線であり、私物化できない公的な財産です。空気や水を汚して経済を発展させる産業化モデルは、新たなカーボンニュートラルの産業革命の最中にあるということでしょう。ただ、その実現には産業革命以上のエネルギーと犠牲も必要です。
人はよりきれいな空気と水のために、過去にない負担をする意思があるのかが問われています。
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