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  完全に壊され、戦後、再現されたワルシャワ旧市街


 欧州連合(EU)とポーランドやハンガリーの対立は、全てを法律とルールによって統合深化を進めてきたEUと各国の裁量権問題を浮上させています。ポーランドの野党「市民プラットフォーム」党首代行を務めるトゥスクEU前大統領は先月10日、EUとの対立がこのまま続けば、EU離脱にも繋がりかねないと強い懸念を示しました。

 人口約3,800万人のポーランドは、リーマンショック後の欧州全体の経済減速の中、唯一プラス成長をキープした国です。2004年にEU加盟を果たした中・東欧諸国の中で経済のけん引役を果たしてきました。しかし、当初から西側諸国とのもめごとが多く、実は英国のEU離脱の原因の一つが、英国で急増したポーランド人出稼ぎ労働者への嫌悪でした。

 というと多くの西側メディアが報じているように、中・東欧諸国人に対してソ連時代の前近代的な遅れたメンタリティを引きずり、自由と民主主義、法の支配が理解できていない二流EU市民との見方が強いわけですが、私はそれは人間の良識を軽視する間違った見方と密かに思っています。

 確かに環境悪化を懸念する隣国チェコが今年2月、適切な環境影響評価(アセスメント)を経ずポーランドが炭鉱の操業延長を承認し、EU法に違反したなどとして提訴した問題や、法の支配を軽視し、EUがコロナ禍からの復興計画を承認しないために補助金を受け取れていない問題などを見ると、その行動が問題視されるのも仕方がない部分もあります。

 しかし、それでも私が個人的にポーランドに肩入れするのは、地球温暖化対策で優等生になりたいEUが各加盟国の事情を軽視して、理想主義に基づいた法とルールを定めるアプローチに大いに疑問を感じるからです。英国に逃げられたEUは今、加盟国に余程の経済メリットを示せなければ、離脱のドミノ現象が起きてもおかしくない状況です。

 実は今から30年前、フランスに移り住んだ当時、社会主義を抜け出したばかりのポーランドのビジネス支援プロジェクトでフランスのコンサルタントチームと関係したことがあります。最初はなぜフランスなんだろうと思っていましたが、実はポーランドはフランスと共通点の多い国だということを後から知りました。

 最も強い結びつきは、両国ともにカトリックの国だということです。フランスは今では神を信じない人が7割にのぼり、教会に通うのは人口の1割というくらい、カトリックの痕跡は薄まる一方ですが、それでカトリックが残したものは、フランス人のメンタリティに深く刻まれています。

 一方、東西冷戦時代にローマ・カトリックの教皇に就任し、冷戦終結後の2005年まで強硬だったパウロ2世はポーランド出身者でした。反共の教皇として知られ、毅然とした態度でソ連と対峙した人物でした。国民の約8割以上がカトリック教徒のポーランドは精神面にカトリック信仰は今も強い影響を与えています。

 1939年以降、ナチス・ドイツのポーランド侵攻、ソ連による国土分割の時に亡命政府があったのはフランスでした。その後、フランスがドイツに降伏し、ヴィシー傀儡政権になったためにロンドンに移動しましたが、ポーランドとフランスのつながりは深いといえます。

 冷戦終結後の経済復興に着手したポーランドは、ワルシャワを完全破壊し、多くのポーランド人を虐殺したドイツよりもフランスに協力を求めたのは当然の流れだったといえそうです。個人的な経験からもポーランド人とフランス人の共通点を感じることは少なくありませんでした。無論、フランス人は上から目線でしたが。

 今、EUの法とルールに従わないポーランドにEUは手を焼いていますが、特にLGBTの扱いを巡り、ポーランドとハンガリーが問題視されています。これは当然、たとえば同性婚の祝福を拒否しているバチカンに従順に従うカトリック国では当たり前のことですが、EUは宗教的価値観よりも人権思想を重視する立場で問題視しています。

 一方、ポーランドやハンガリーの主張は「これはLGBT差別問題ではなく、単純に家族の価値観を守りたいだけだ」と主張しています。国家にとっての最小単位は家庭であって、その家庭は子供を産み子孫を育てられる男女の夫婦が営むのが基本で国家の維持に関わる問題で譲れないという主張です。

 ポーランドにしろ、ハンガリーにしろ、政府の独裁的統治への批判ばかりが西側メディアを賑わしていますが、実は西側の行きすぎたリベラリズムへの警戒感が非常に強く影響しています。ポーランド人は国民のプライドとして良心、良識を重視しています。

 日本文化に非常に高い関心を寄せているポーランドですが、その背景には日本人の良識の高さがあるといわれています。表面的には日本語履修者の多さや、最近流行りのワルシャワのうどん屋などの日本文化の浸透がニュースになっていますが、実は日本人が良心的であることに親近感を持っていることは見逃されています。

 無論、ドイツとソ連に挟まれ、国土を失い、都市を破壊され、国土が廃墟となったポーランドのレジリエンス力は、日本の敗戦からの復興、東日本大震災からの復興など、逆境にあっても不屈の精神を持って立ちむかう精神に共感するところがあるのも事実でしょう。

 隣国のロシア寄りのベラルーシから移民が押し寄せ、天然ガスや石油のロシア依存度を下げることに苦戦するポーランドですが、今もポテンシャルの高い国であるのは確かだと思います。

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