MIGRANTS-BELARUS-EU-POLAND
 
 フランスやドイツのメディアは連日、ポーランドとベラルーシの国境沿いに集まるアフガニスタンやイラクからの難民・移民の悲惨な窮状を報じています。すでに死者も出ており、寒い冬に向かい、状況は悪化しています。彼らは外国駐留軍がアフガニスタンから撤退したことで、その数を増やしました。

 この状況に対して、日頃は人道重視の欧州連合(EU)が及び腰です。特に難民・移民の大半がめざすドイツが総選挙後の連立交渉が長期化し、政治空白が生じていることも一因し、受け入れに手を挙げず、EUも対策に動いていません。

 その間にポーランドが有刺鉄線を張り巡らした国境付近で、飢えと寒さで死者も出ています。彼らの多くは「もう帰るところはない」といっています。それなのに2015年にシリアから大量難民が押し寄せた時と違い、受け入れで積極的に手を上げる加盟国はありません。

 タリバンの強権統治を逃れるアフガン難民の大量流入を恐れるポーランドは、9月にベラルーシとの国境沿いに非常事態宣言を出し、有刺鉄線を敷設しました。今月14日には議会で国境守備隊が不法移民者を国境で摘発した際、追放できる権限を与える法案を通過させ、EU人権法違反と非難され、対立が続いています。

 EUも複雑です。バイデン米大統領はEUとの十分な協議もなく、一方的にアフガン撤収を8月に実施しました。アフガンの外国軍駐留の中心はアメリカなので、北大西洋条約機構(NATO)の一員としてアフガンに駐留していたEU加盟国の各軍も追随するしかなく、その後のアフガンを心配する余裕もありませんでした。

 結果的に駐留軍な国際機関に協力したアフガン人は、実権を握ったタリバンの報復の脅威に晒され、国外に逃げられた人もいる一方、国内で身を隠し、死の恐怖に怯えながら暮らす人も多いことが伝えられています。さらには人道支援が滞ったために生活に困窮し、自分の子どもを売って生き延びる家族も増えているような状況です。

 アフガン国内にとどまっても地獄、国外脱出して欧州をめざしても地獄というのが今のアフガニスタン人の状況です。仏公共ラジオ局フランス・アンフォは現地取材を行い、劣悪な環境の中で有刺鉄線を超えて、連日ポーランド入国を試みる難民・移民の現状を伝えました。

 ドイツ公共TVのZDFは24日、EU内で難民・移民の処遇を巡る対立が起きていることを伝えています。特に国境沿いに難民・移民が押し寄せている中東欧諸国には危機感があり、EU内の東西対立が深刻化しています。東西冷戦時代に地下でキリスト教信仰を守ってきた中東欧諸国は、イスラム系難民・移民を強く警戒しています。

 アフガン難民の急増はバイデン政権の失策だけでなく、EUが選挙不正で制裁を科しているベラルーシ独裁政権がポーランドやバルト3国に難民を送り込んでいる問題もあります。ドイツのマース外相は、「ルカシェンコ大統領は、国ぐるみの密航あっせん業者のボス以外の何者でもない」と強く非難していますが、制裁に対するルカチェンコ氏のEUへの報復でもあります。

 連日500人がベラルーシを通過してポーランドに入っており、大半はドイツを目指しているといわれています。ポーランド警察は8月以来、約4,700人以上のアフガン人やイラク人がポーランドの国境を違法に通過したとしています。

 そもそもアフガンやイラク、シリアからEUをめざす難民、移民はアフガン情勢が急変する前から増え続けていました。EUは地中海難民ルートに面したギリシャやイタリア、スペインなどの負担が増えたための、難民受け入れに消極的な加盟国にも公平に負担する方針を出し、数値目標まで決めましたが、特に中東欧はまったく応じる気配を見せていません。

 そこに今度は拒否している国々に難民・移民が直接押し寄せており、彼らは壁や有刺鉄線を敷設し、その費用をEUが負担するよう要求しています。EUは負担を拒否する一方、壁を築くことには反対していません。今後、冬に向かうEUは、難民・移民を劣悪な環境に放置することはできなくなるでしょう。

 アメリカも、この問題で何らかの責任を取る必要があります。国内外で飢えに苦しみ、日々命の危険に晒されるアフガン難民に対しての救援に時間を待つ余裕はない状況です。

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