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 「地球温暖化対策に誰が巨額の金を払うのか?」これが具体的気候変動で追い詰められた世界に問われる課題です。そこに登場した力強い助っ人が、温室効果ガス排出量削減や気候変動の緩和に貢献する産業の成長を支援する金融機関の動きです。グローバルな血液の行き先が明確になることで地球は救われるかもしれません。

 米グラスゴーで開催の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、国連のマーク・カーニー気候変動問題担当特使が発表したのは、金融規制当局の新たなルールとして、銀行や機関投資家、保険会社や金融規制当局など、世界の金融業界が1つとなって温暖化対策に取り組むための枠組み作りについて発表しました。

 東西冷戦時代は核戦争が起きれば地球は破壊されるとの危機感があり、今はコロナ禍で「ぼんやりとした不安」が拡がっています。地球温暖化も人々の不安を掻き立てていますが、こうしたグローバルな問題は、各国の国益が絡み、政治的対立などから遅々として解決の道が見えないのが現実です。

 特にアメリカにトランプ政権が登場して以来、各国は保身に走る傾向があり、グローバル化は後ろ向きになり、地球規模の問題解決にも腰が引ける傾向があります。今回のCOP26には温顔化ガス最大の排出国の中国や、重要なエネルギー供給国であるロシアの不参加も暗い影を落としています。

 国家のエゴ、国民のエゴが絡み、身動きが取れない状況です。その中で、すでにグローバル化の定着している銀行や機関投資家、保険会社、さらには各国・地域の金融規制当局などが、温暖化対策に本気で乗り出すとすれば、最後の切り札といっても過言ではありません。

 その指揮をとるのが、カナダと英国で中銀総裁を務めた経験を持つ国連のマーク・カーニー気候変動問題担当特使です。国連の「グラスゴー・フィナンシャル・アライアンス・フォー・ネットゼロ」(GFANZ)を指揮しています。

 GFANZが立ち上げた地球温暖化ガスの排出量削減に向けたプログラムに参加を表明した金融機関の資産は130兆ドル(約1京4800兆円)に上るといわれています。各国が温暖化対策に巨費を投じることに二の足を踏む中、国や国民の手を離れた資金を保有する金融機関が本気度を示すことは、極めて重要といわざるを得ません。

 環境や社会、ガバナンスに対して積極的な取り組みをする企業に投資するESG(環境・社会・ガバナンス)投資が注目される中、金融機関の巨額投資は、カーボンニュートラルに向けた技術開発に大きく貢献しそうです。

 GFANZの狙いは、利益を得ながら排出量削減につながる投資に資金をシフトすることが狙いで、銀行融資だけでなく、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ(PE)投資会社、ファンドなどによる投資の形で資金が提供されることになります。

 すでに米連邦準備制度理事会(FRB)や英中銀イングランド銀行をはじめとする先進国の中銀の金融規制当局や会計基準機関も情報開示ルール作成などを通じて監視の役割を担うことで合意したと欧米の経済紙は伝えています。

 カーニー氏は環境対策への金融機関のグローバルな取り組みは「金融システムを変革する」ことに繋がると述べています。政府や公的機関が協調して温暖化対策に当たるより、民間機関が対応する方が迅速で効果的ということです。無論、民間は採算を度外視した行動はとれない弱みはありますが、危機をチャンスに変える力は持っています。

 何より、お金という血液が本当に必要なところに必要な量、適切に流されることは極めて重要です。金融機関は基本、民間であると同時にグローバル化の先頭を走ってきた経験を持つ強みがあります。無論、これらの資金が適切に投じられる監視システムも重要です。

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