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 そもそも大企業中心に終身雇用が習慣化していた日本では、労働転職市場が欧米に比べ、極端に少なかったために関心も薄かったといえます。ところが今では転職斡旋サービス産業は活況を呈しているようですが、まだまだ、個人より組織が優先される日本文化は変わらず、組織への奉仕という精神が日本企業を支えています。

 今、ポスト禍を経験した欧米で起きているのは、人手不足と失業率の高止まり問題です。つまり、働く人の意識に共通した新たな変化が指摘されています。注目すべきは求職活動に復帰した人に仕事がないという労働「需要」の弱さよりも、求職活動に復帰した人が少ないという労働「供給」の伸びが弱いことです。

 アメリカでは雇用者数が予想より伸びていないのは、失業保険の上乗せ給付の8月の失効に合わせて求職活動が爆発的に伸びるという予想が覆され、企業は人手不足を解消できていない現実があります。

 米労働省が5日発表した10月の雇用統計によれば、非農業部門就業者数は53万1000人増加し、失業率は前月の4.8%から4.6%に低下しています。ところがリーマンショックからの回復期に起きたような企業が採用基準のハードルを高くするほど求人が求職を上回っていた買い手市場と中身は違っているといいます。

 それは求人に対して求職者が極端に増加したのではなく、コロナ禍後の経済活動の加速に伴う起業の求人増加に求職者の供給が追い付かず、企業は採用基準を下げている現象が起きているからだと米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は指摘しています。

 そのため、採用に当たって必要だった大学の成績等の提出を求めなかったり、大卒の条件が外され、高卒でも採用する企業が増えていることが指摘されています。とにかく、やる気があって熱心に働いてくれる人なら学歴もキャリアも問わないというわけで、アメリカではこれまでにない採用方法です。

 「労働市場分析企業EMSIバーニング・グラスと民間調査機関コンファレンスボードの新たなデータによると、現在のペースで学歴要件の緩和が進めば、今後5年間で非大卒者に140万人分の雇用機会が開かれるとみられる」とWSJは指摘しています。

 実はこの現象はフランスや英国、ドイツでも似たような状況が起きており、コロナ禍から起死回生を狙う企業にとって採用基準の緩和は人手不足解消の手段となっています。転職市場は即戦力が重要なので経験者が優遇されますが、今では未経験者を雇い社内研修にエネルギーを割くことも余儀なくされています。

 建設現場の管理業務をしていた人が、1年の失業の後に見つけた仕事は機械メーカーの工場管理だったり、自動車部品メーカーの生産ラインで働いていた人が化粧品メーカーの品質管理をしていたりと様々です。

 そもそもコロナ禍で命を落とした人のことを考えると労働供給市場は縮小し、同時に働く側も、より意義を感じる職に就きたいなど意識に変化が見られるというわけです。

 特に宿泊・飲食・教育・医療といった業種は、コロナ禍で苦労したため人気がなく、求職者が減っているのが現実です。アメリカでは面接なしで採用を決める企業も増えているといわれ、労働市場のミスマッチ解消は世界的に大きな課題になっているといえそうです。

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