日本を除き、年末に向かい、世界は新型コロナウイルスの感染再拡大に襲われ、まるでダメ押しのように公衆衛生の脅威が再来しています。ドイツでは過去最高の1日の新規感染者が18日、6万人を超え、ベルギー、オランダでも記録を更新しています。フランスも2万人を超えました。
どの国もワクチン接種率が7割に達し、重症化リスクは低いとはいえ、病床の感染患者の占有率は上がり、各国政府は3度目のワクチン接種の推進や健康パスの活用で、経済活動の抑制をできるだけ避け、乗り切ろうとしています。そんな中、リモートワークも強く推奨されています。
実は働き方の多様化がもたらすメリットが注目されて30年は経ち、IT系企業がけん引する形で特にリモートワークは10年前から採用する企業が増えていました。それがコロナ禍でITだけでなく、電機メーカーや製薬会社など、様々な業種に広がり、営業職、エンジニア職、経理にまで職種も拡大しました。
コロナ感染が拡大するたびに、リモートワークが推奨され、今では田舎と都会に生活の2拠点を持つデュアルライフも定着するほどになり、企業によってはオフィススペースの縮小で危機を乗り切る判断に踏み切った場合も少なくないことが報告されています。
しかし、リモートワークの長期化や定着に伴い、成果をあげるという点で企業は試行錯誤を繰り返しています。フランスの例でいえば、リモートワークの社員への就労管理、勤怠管理に苦労しています。特に法やルールで縛らないと管理しにくい西洋社会では、企業は社員との雇用契約の根本的見直しは必須です。
例えば、あるパリに拠点を置く社員300名のシステム開発企業は、リモートワーク希望者との契約更新で、会社側は月曜日と火曜日は出社を義務付けたかったのが抵抗に遭い、その項目は削除され、必要に応じた随時の出社となったなど、厳しい交渉を迫られています。
ただ、契約で縛ったとしても監視できるわけではないので、労働時間が守られているか、仕事に集中しているかを会社側が監視するのに苦労しています。もともと成果主義なので、結果さえ出せばいいという側面もある一方、仕事は複雑化し多岐に及ぶため、必要な時にパソコンの前にいないことでトラブルが起きています。
仏経済紙キャピタルによれば、自宅で働くフランス人従業員の45%は、管理ツールを介して雇用主によって監視されているといいます。これは繰り返されるロックダウンと大規模なリモートワーク導入で、実際に従業員が距離に関係なく真面目に働くことを保証したい雇用主にとって、監視の必要性が高まった結果ともいえます。
企業側がどんな監視ツールを使っているかは明らかになっていませんが、米国では、いくつかのアプリが大きな注目を集めており、代表的なのはTimeDoctorで、フランスにも導入する企業が増えています。
雇用主は、チームが取り組む特定のタスク、各タスクに費やされた時間、従業員のWeb使用、接続と切断の時間などを知ることができ、さらに5分ごとに従業員のスクリーンショットを撮ったり、従業員の電話のGPSデータを追跡したりでき、全ては日報の形で管理職に送信されるシステムです。
個人のプライバシーを重んじる国での監視に賛否両論あるものの、性悪説の国としては当然とも受け止められています。キャピタル誌も企業による従業員の監視行為は違法ではないと指摘しています。
ただ、米国生まれの監視システムが全てフランスで認可されているわけではなく、同システム導入には会社側と従業員の同意も不可欠です。いくつも法的ハードルを企業側は超える必要があり、無論、従業員側の就業時間の報告という伝統的システムをキープしている企業もあります。
いずれにしても信頼関係や勤労意識だけを頼りとするモラルコード社会の日本と違い、性悪説の欧米ではリモートワークでの監視システム導入を不可欠と考える企業は増えているのが実情です。
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