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 英国の人材調査会社「ECAインターナショナル」が12月15日に明らかにした世界主要都市の駐在員生活コストランキングで2年連続、香港が1位となった。3位は東京がランクイン。中国共産党の引き締めが強まる香港にとってコスト高の高止まりは、けっしてプラスにはならないでしょう。

 コロナ禍で襲われた2020年、企業や政府機関が送り込んだ海外駐在員たちは、医療体制が十分でない国の場合は1次的な引き揚げ、先進国では駐在員の入れ替えの時期を延長し、現地待機という企業も多かった。それにしても1年10カ月は長く、今年秋以降は移動を開始する企業も増えていた。

 ところが11月以降、日本を除く先進国は一斉に感染が拡大し、また、動きが封じられています。それでもワクチン接種の普及で危険度は下がっているとの認識もあり、動きが完全に止まったわけではなさそうです。とはいえ、企業にとって駐在コストは頭の痛い問題。

 今回発表された駐在生活コスト調査は2005年に始まったもので、今回は世界121カ国・地域にある208の都市を対象に2021年3月から9月までの期間で調査が行われた。食料コスト(乳製品、肉、魚、果物、野菜)、ベーシックコスト(日用品、消耗品、レジャーなど)、さらに一般コスト(衣料、電気製品、アルコール、タバコなど)や光熱費、公共交通機関の5項目が調査対象。

 2年連続1位の香港に続いたのは、ジュネーブで前年の4位から2つランクを上げ2位になったが、物価の高さは欧州でも有名。3位の東京は前年の3位から1つ順位を下げ、4位ニューヨーク(前年3位)、5位テルアビブ(同7位)、6位はロンドン(変動なし)、7位はチューリッヒ(同5位)、8位はソウル(変動なし)、9位に上海(同11位)、10位は広州(15位)だった。

 個人的には駐在の生活コストで比重の大きいのは家賃で、1か月の家賃が家族向け住宅で100万円を超える都市は先進国に多い。一方、ECAによるとトップ20のうちアジアが半分の10都市だったとしている。これは治安対策で地元では破格の高級物件に住むしかない現実もあります。

 香港がトップについた理由について、今年の物価上昇幅は2.7%と予想。2019年の逃亡犯条例改正案に端を発した反政府デモと2020年からの新型コロナウイルスによる停滞から回復基調にあるからとECAは分析している一方、今後の動向いかんで香港人気が急落すれば話は別でしょう。

 某大手日系自動車メーカーでは2010年時点で、駐在コストは1人当たり約3,000万円としており、そこには5年駐在した場合の日本と赴任国との間の2往復分の家族を含む航空運賃、駐在開始時期の1か月のホテル暮らし代、生活必需品の購入や水道光熱費、家賃、車購入費用、ガソリン代、生活費も含まれている。無論、24時間360日拘束するため給料自体も上がる。

 同自動車メーカーでは常時、約700名が海外に駐在しているので、単純計算でも210憶円が支出されていることになる。その人件費に見合った利益を出すことが求められる。30年前以上のバブルの頃は、5年駐在すれば家が建つと言われていた時期もあるが、今はそんなことはない。

 だから、海外赴任のテンションが上がらないという指摘もあり、グローバル研修を担当する私のような講師は、海外駐在をいかにポジティブに受け止めてもらうかが重要なポイントになっている。

 ただ、昔は海外駐在で給料が上がっても、社会の出生レースを外れるリスクもあり、マイナスもあったわけで、今は逆に海外駐在キャリアが出世にプラスに働く企業も増え、むしろ帰国者を有効に活用できない相変わらず内向きの企業は実績を伸ばせていない現実もあります。

 個人的には海外駐在員の規模縮小は必至な今の情勢の中、1人1人の異文化間コミュニケーションやグローバル・マネジメントスキルを過去にないレベルに上げることが重要と考えています。少人数で短期間に結果を出すためには人材育成は必須で、海外にとりあえず送ればなんとかなる時代は過ぎ去っています。

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