13765930124_d3aa7e6d24_c

 フランス大統領選の決選投票を1週間後に控え、世界もフラン氏に動向を注目しているようです。理由は現職の中道のマクロン大統領に決選投票で挑戦する右派・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン候補が大統領になればウクライナ危機でロシアに制裁を課す西側諸国に亀裂が入る可能性があるからです。

 もはや国民が大国とは思っていないフランスですが、国連安保理常任理事5か国の1国であり、欧州連合(EU)をドイツと並んでけん引するフランスは核兵器も保有しています。北大西洋条約機構(NATO)でも中心メンバーでウクライナ戦争でも存在感をアピールしています。

 そのフランスで、防衛、経済問題を念頭にロシアとの関係を維持すべきと主張するルペン氏が大統領になった場合の西側諸国への影響は小さくはないとの懸念が広がっています。一方のマクロン氏は現在も大統領としてロシアへの国際的な協調制裁には歩調を合わせています。

 そもそもルペン氏は「今回の大統領選は、グローバリストのマクロン氏とフランスの主権回復を優先する私のどちらを選ぶかの戦いだ」と断言しています。マクロン氏のグローバリストの顔は、米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーなどへフランス政府が10億ユーロ(約1,350億円)も支払って経済政策のアドバイスを受けていたことにあります。

 フランスにはアメリカ型金融資本主義へのアレルギーがもともとあり、マッキンゼーはその権化ともいうべき存在です。金融界出身のマクロン氏が考えそうなことですが、過度な競争、一般従業員と経営幹部の極端な給料格差への嫌悪感は根強いものがあります。

 最近、フランスの自動車メーカー、プジョーとイタリアのフィアットが合併したステランティス社のタバレスCEOに、2021年の報酬として約1,900万ユーロ(約25億6,000万円)、さらに3,200万ユーロ(約43億円)相当の株式と約2,500万ユーロ(約33億7,000万円)の長期報酬が与えられることが報じられました。

 理由はそれだけの利益をステランティス社にもたらしたということですが、プジョーの一般社員の中には「そんな金があったら、どれだけたくさんの雇用を生めるか」と強い批判の声も上がっています。タバレス氏への報酬は、強欲といわれた日産のゴーン元会長をも驚かせるものです。

 実はルペン氏の主張は、極端な資本主義やグローバリズムの犠牲となった貧困層に寄り添った政策を打ち出しています。内政の最大の争点である年金改革でも、年金支給年齢で引き延ばしのマクロン氏とは真逆の引き下げをルペン氏は主張しています。

 第1回投票で急進左派のメランション候補に入れた有権者の中には、メランション氏が最も嫌うルペン氏に投票するという人もいます。

 今や極右のイメージは過去のいかなる時期よりも薄まるルペン氏率いる国民連合は、政権政党をめざす右派候補です。しかし、メディアは相変わらず、ルペン氏を「ポピュリスト」「極右」と呼び続けています。

 ルペン氏は「私は国民連合のための大統領になるのではなく、全ての国民のための大統領になる」と宣言していますが、トランプ氏同様、「フランス第1主義」なことは間違いありません。個人的には、表向き国際協調を評価しながら、実は超内向きのドイツ左派政権の偽善的態度よりは余程いいと思っています。

 リベラルメディアは相変わらず、マクロン氏とルペン氏の対立をもってポピュリズムの台頭による社会の分断などと指摘していますが、マクロン氏を心の底から支持しているのは3割に満たないという世論調査もあります。

 有権者の本音は雇用であり、移民増加による社会の不安定化であり、それを解決してくれる人物であれば誰でもいいというのが本音で、その思いはますます強まっています。