USA vs China

 アメリカのペロシ下院議長が台湾を突然訪問したことに世界中が注目しています。訪台ギリギリまで予定が明かされず、ペロシ氏の電撃訪問が演出された一方、面子を潰された中国は猛反発し、何らかの報復を行うことが確実視されています。

 アメリカ政府はペロシ氏の行動から距離を置き、個人の判断による外遊としていますが、中国がそう受け止めることはないでしょう。台湾を含む1つの中国を原則認めるバイデン政権が独立主権国家を主張する台湾への下院議長の訪問を黙認したことは、今年、続投をめざす習近平国家主席にとって、これ以上、面子を潰される行為はないでしょう。

 日本は高みの見物を決め込み、台湾有事に発展することがなければ、あくまで米中問題であって日本は関係ないという姿勢を貫いていますが、本当にそうなのでしょうか。日米同盟を生命視する日本の運命はアメリカ外交に大きな影響を受けることは必至です。

 その意味で、米中の軍事的バランスが過去のいかなる時よりもアメリカが圧倒的に有利ではなくなっている今、ロシアのウクライナ侵攻の動向を注視してきた中国が、面子を潰された時にどんな行動を取るのか、戦争リスクは非常に高まっているといえます。

 個人的な意見でいえば、ロシアのウクライナ軍事侵攻から学べることは、ロシアはアメリカを怖がっていないということです。戦争という古典的な手法を取るプーチン強権外交は許されない行為ですが、戦争が始まった場合、その長期化を止められない事実を見せつけられています。

 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の時は、最後的はアメリカが本腰で関与したことで解決に至りましたが、東西冷戦後だけでなく、ベトナムで代理戦争を行ったぐらいで大国同士が直接、戦争したことは、実は第2次世界大戦後、1度もありません。理由は核戦争への発展をさすがに避けるためでした。

 アメリカはキューバ危機で旧ソ連がキューバに核弾頭を配備しようとして、当時のケネディ大統領がギリギリのところで米ソ戦争を回避させた経験がアメリカ外交の伝説になっています。しかし、ソ連と違い実力を蓄え、思考回路が西洋人と全く異なる中国に対して、ケネディの時に成功体験は通じるとは思えません。

 バイデン、ペロシともに高齢の両氏は、私には過去の成功体験の亡霊にとりつかれ、正しい判断をしているとは思えません。今後の対アメリカの中国制裁のシナリオとして考えられる手始めは、説得力のない理由で在中アメリカ人の身柄拘束、在中米企業の活動締め付け、世界中のどこかの米権益への攻撃なども考えられます。

 超内向きの中国共産党政府は、国民に対して主権侵害に分かりやすい方法で報復したことを見せる必要があります。香港はそれで1国2制度を終わらせ、手中に収めました。この数年の香港弾圧を旧宗主国の英国は何もできずに見守り、アメリカも効果的な制裁は行っていません。

 今の米中関係は表面上、貿易戦争で対立していますが、過去のいかなり時期より経済関係は深まっており、この経済依存度が安全装置と考えるのは西側の勝手な思い込みです。ロシアは欧州と経済・エネルギー依存度を深めましたが、ウクライナ侵攻で何も効果を生んでいません。

 中国はどんなことがあっても台湾に侵攻しないということを理路整然と説明できる専門家は今のところ見当たりません。権威主義の国の意思決定がどう行われるかは読めないものが多いということです。特に世界第2位の大国を豪語する中国共産党は、国民にその事実を証明し続ける必要があります。

 無論、時間を戻せるのであれば、第2次世界大戦終結後、戦勝国側に立っていた中国、ソ連に米英仏が弱腰だったことで、中国の共産化を許し、その結果、微妙な立場の台湾が生み、朝鮮半島は分断され、日本はソ連に北方領土を違法に奪われること許してしまった過去があります。

 ソ連とは向き合っても対中政策が曖昧だったアメリカは、結局中国を選び、台湾を見捨て、日本も追随してしまいました。戦後の平和に浮かれた状況で、せいぜい朝鮮半島で38度線まで共産軍を追いやるのが精いっぱいだったことが、問題を引きずってきた原因の一つです。

 ロシアのウクライナ侵攻で世界が19世紀の帝国主義時代に逆戻りすることを許すわけにはいかないわけですが、ロシアに加え、中国が暴挙に出れば、平和は遠のき、世界がカオス化するのは必至です。

 アメリカはオバマ民主党政権の時も対露、対中関係は冷え込みました。オバマ、クリントンの人権外交はロシアも中国も嫌悪しました。

 自由と民主主義、人権の原理を押し付けられた権威主義の国は政治的対立の影で、密かに中国はアメリカの最先端の技術を盗み、孔子学園を作ることで世論操作を行い、大国にのし上がり、ロシアも虎視眈々と復活を模索してきました。

 民主党は自国の原則を露わにする外交で一見正義のように見えても、価値観の通じない相手には決定的な逆効果を与える場合がありうるというのが外交の教訓だと私は考えます。バイデン政権がロシアを追い込み、孤立化を深めたことがウクライナ侵攻を決断させたというのが私の見立てです。

 重要なことは相手に戦争を思いとどまらせることです。台湾有事が発生し、日本も参戦が迫られれ、それも戦争が長期化すれば、多くに人が犠牲となり、アジアが大混乱に陥るのは必至です。19世紀、20世紀の弱肉強食の野蛮な行為を許さない21世紀であってほしいものです。

 今の流れでは、面子を潰された中国が危険な選択をする可能性は否定できません。英雄気取りのペロシの台訪が「大砲」に変わらないことを祈るばかりです。

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