Leader

 中国は今、ゼロコロナ政策の弊害が表面化し、経済に甚大な悪影響を与えています。にも関わらず軌道修正できないのは、習近平体制に巣くう権威主義体制による「習近平主席が間違えることはありえない」という間違った幻想を抜け出せないからだと専門家は指摘しています。

 ナチスドイツのヒトラーも連合軍の猛攻で劣勢にある中、軍の指導部の報告を受け入れず、自分は神であり、間違えることはありえないとの信念が災いし、自害するしかない状況に陥りました。ロシアのプーチン大統領も多くの将来のある若者を戦場で犠牲にして間違った戦争を継続中です。

 しかし、このような権威主義のトップリーダーの間違いは、独裁国家だけに存在するものではありません。たとえば、権威主義的性格の強い韓国で最近起きた150人以上が犠牲となった韓国・ソウルのハロウィン事故でも、治安当局の危機対応で次々にリーダーの不祥事が明らかになっています。

 警察の不祥事では、安倍元首相が暗殺された事件で酷い警備体制が明らかになり、よその国のことはいえない不備が露呈しました。その背景に意思決定に潜む権威主義があるのは確かと私は見ています。さらにいえば、自分の地位に固守する保身が全体を危機に晒すともいえます。

 大企業であれば、大規模な不正が暴かれた時、大抵、会社の歴代トップが不正に関わるか、見て見ぬふりをしたことが原因となるケースが少なくありません。自主廃業した山一證券の場合は、不正を知らない人物が最後は社長にさせられ、責任だけ取らされた最悪のケースでした。

 責任の所在を明確にしない代表選手は日本ですが、責任転嫁の代表選手は韓国といえるでしょう。トップリーダーは保身のため、自分に火の粉が及ばないよう自分以外の人物に罪をかぶせるために犯人捜しをするのが常です。梨泰院の事故でも治安トップは犯人探しに躍起です。

 しかし、組織が問題を起こした場合、責任を取るのはトップであり、部下への責任転嫁で問題を終わらせようとするのは完全な間違いでしょう。しかし、そうならないのは、そもそものリーダーシップとマネジメントに深刻な認識違いがある場合が多いのが常です。

 韓国は肩書主義の国で上司が部下を肩書なしで呼ぶのも嫌います。裏を返せば強烈な地位に拘る権威主義、ステイタス主義があるからです。韓国企業に勤める日本人の友人は、会社側か重い責任を提案された時、自分にはできないのではと悩んでいた時、上司が「肩書はもらっておくべきだ」とアドバイスされたそうです。

 このような考え方や行動規範は儒教からきたともいわれています。マネジメント方法で下が上に対してどうやるべきかだけが強調され、上司が部下に対してどうあるべきかについてはうわべだけの謙遜が重視されるだけです。

 さらに地続きで国境が多く存在する大陸や半島は例外なく、嘘は方便であり、悪とは考えられていません。その結果、部下は自分に不利な報告はせず、嘘の報告をするのもしばしばです。結果的に部下から提供された嘘や作り話の報告をもとに上司が意思決定することも多々あります。無論、成果は出るわけもありません。

 中国が新型コロナウイルスを世界に振りまいたといわれていますが、関係者の証言から、深刻な事態を知る専門家の意見が、現場トップによって歪められ、それが中国共産党指導部に上げられたことが初動を遅らせた最大の原因と見られています。これも権威主義のマネジメントの弱点が引き起こしたといえます。

 このような問題を起こさないためのリーダーシップとマネジメントは、下が上に対してどうあるべきかより、上が下に対してどうあるべきかを重視することにあります。しばしば日本では報連相が強調されますが、これが海外で機能しない理由は下から上への報連相だからです。

 シャーマニズムや儒教による権威主義色の強い韓国でも、上に立つ者は下からの報告を受けるだけで、自ら情報収集する姿勢は希薄です。そんな国では昇進すると欲しがるのが社内に自分の部屋を持つことです。ロシアも同じような考えが強いのを見るとステイタス志向、権威主義が見てとれます。

 その国に存在する組織におけるリーダーシップやマネジメントは、その国に歴史や文化の影響を受けています。日本は殿を支える忠誠心が現代の企業文化にも影響しています。「上司に迷惑を懸けてはいけない」という言葉はしばしば西洋人を驚かせます。そこから生まれ行動規範を世界に浸透させようという日本企業は少なくありませんが、容易なことではありません。

 呼吸をするように嘘をつくといわれる中国人や韓国人、権力者がルールを決めるとの考えの強い途上国で「法は破るためにある」という遵法意識の希薄さは当然ともいえるものです。法治国家の体をなしていないことは韓国の従軍慰安婦や徴用工の賠償要求を待つまでもありません。

 私は梨泰院の事故の背景に、組織に巣くう権威主義があると見ています。権威主義のどうしようもないところは、責任を取る意識が驚くほど希薄なことです。結果的に毎回、前大統領を刑務所に入れるような事態になってしまうわけです。

 無論、上が責任を取ればいいという話でもなく、関与した全員が責任を感じるべきですが、犯人捜しをして見つかれば、あとの人は涼しい顔というのは大きな間違いでしょう。しかし、権威主義が無責任体制を生んでいるのも事実です。

 関係する人間全てのコミットメントを高めると同時に、特に権威主義に陥りやすいトップリーダーは
自ら情報収集し、自分で考え抜き、責任ある決断を下し、先頭に立って組織を率いる意識が必要です。特に東洋ではシャーマニズムもあり、人間崇拝する傾向が強く、結果的に組織を弱体化させるリスクがあることを知るべきでしょう。