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 米ハイテク企業といえば、経営トップがカジュアルな格好でステージに登場し、新サービスを華々しくアピールする姿が定着している。ところが今、国家予算に相当するような資産を持つ米グローバル・ハイテク企業の大量人員整理が続いており、花形産業のイメージは根底から変化しようとしている。

 フェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は今月9日、従業員の13%に相当する1万1000人を削減すると発表した。同氏はコロナ禍後のオンライン利用の急激な増加は恒久的なものだと予測したことについて「私は間違っていた。責任を取る」と述べた。
 その数日前には、昨年まで米ツイッターを経営していた共同創業者のドーシー氏が、同社の新オーナーに就任したイーロン・マスク氏が約50%の人員削減を行ったのを受けて、遺憾の意を表した。「私は会社の規模をあまりにも急速に拡大させた。そのことについて謝罪する」とツイートした。

 マスク氏は、ツイッターのずさんな放漫経営の実態を明らかにし、ツイッター社は世界の従業員の半数を解雇する経営再建策に乗り出した。同氏は倒産の危機にまで言及するほど危ない状況としており、かつて一世を風靡したSNSの巨人といわれたフェイスブックとツイッターは大きな岐路に立たされている。

 グーグルも夏以降、コスト削減策の一環として、社内に残りたい場合は新たな職務に応募するよう従業員に求めている。米ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、社内でスタートアップを構築するインキュベーター制度「エリア120」の100人を超える従業員の約半数に対し、90日以内に社内で別の職務を探す必要があると伝えたことが報じられている。

 WSJによると「ザッカーバーグ氏はコロナの流行初期以降、自社の従業員数を80%以上増やし、約8万7000人にした。グーグルの親会社アルファベットは、2020年初めから今年9月までに従業員数を6万8000人近く(57%)増やした。ツイッターの従業員数は、コロナ下の当初2年間で2倍以上に増えた」が「好況期の永続性は幻想だった」と指摘している。

 この大手ハイテク企業の急激な解雇のドミノ倒し現象をどう読むべきなのか。ITバブルの終焉自体は何度も指摘されてきたことだが、ハイテク企業はそもそも新しいテクノロジーが驚くほどの利益をもたらすという性格を持ち、人々の生活や企業活動に変化をもたらすことが基本となっている。

 しかし、SNSはコミュニケーションツール革命で、移り気な大衆相手なので、今、たとえば好調なのは動画に特化したSNSのTiktokだが、その寿命は短いかもしれない。そもそもフェイクニュースが蔓延ることで国政選挙に悪影響を与えたり、児童ポルノを氾濫させたりと暗い側面が常に問題視されている。

 便利で楽しいツールは、常に暗い影が付きまとっている。フランスのマクロン大統領は今月10日、パリで「オンライン上で子供たちを保護する研究所」を立ち上げた。目的は、未成年者がネット・ポルノ、ネットいじめ、または暴力にさらされる機会が増えていることに対抗するためだ。

 「デジタル空間は無法地帯であってはならない。これはすでにテロに対して行ってきた戦い同様、子供たちを保護するレベルで継続しなければならない」とマクロン氏は述べた。これを放置すれば、地球温暖化以上に人類滅亡の危機を加速させるかもしれないという危機感がある。

 巨額の利益を短期間で得るビジネスモデルはリスクに満ちている。ザッカバーグ氏はハーバート大学時代、ネット上で学内の女子大生の好感度をネット上で投票して公表することがフェイスブック誕生に繋がったとされている。今ではセクハラといえるが、人間の欲望の影の部分への意識はまったくなかったようだ。

 IT大手の急激な減速は、IT市場の環境変化によるもので、利用者は便利で楽しいはずのツールで、実は傷つき、憎悪によりテロを拡散し、子供をダメにし、国政まで左右し社会は分断される現象が起きている。つまり、そもそもリスクを抱えたIT市場は大きなリセット時期に入ったといえる。

 市場は現実を反映したものでしかなく、需要は常に変化する。利用者急増で見えてきたネガティブな側面を是正しない限り、永続性はないし、そもそも永続性のあるビジネスはそんなに多くはない。

 ビジネスの先頭を走ってきたハイテク産業の経営者でさえ、未来を読み誤るわけだから、今の世界の変化を読み解くのは非常に難しい。フェイスブックに象徴される非常に軽薄な認識しかないビジネスモデルは衰退して当然だし、そこに群がったエンジニアたちが大量解雇される流れも想像がつく。

 その意味でもIT業界は大規模な調整局面に入り、根本的見直しが求められているといえそうだ。いずれ人間を幸福にしないテクノロジーやビジネスモデルに永続性を思い描くのは幻想でしかないことは、はっきりしている。