日本の岸田政権も原発を最大限活用し、稼働期間の延長や新たな技術による原子炉建設にまで言及している。背景にはウクライナ紛争によるエネルギー危機でエネルギー調達の多角化が急がれる現実があり、その一方で気候変動対策で温暖化ガス排出を短期間で抑え込む圧力がかかっていることなどが挙げられる。
フランスは1昨年暮れ、マクロン大統領が原発増設を発表し、昨年春にはさらに具体的プランを明らかにした。同時に放射性廃棄物の処理に関しても安全性を保障する適切な方法の検討が進められている。
フランスと日本が似ていることの一つは太陽光ソーラーパネルの設置を巡る問題で、補助金や節電対策で設置した個人が、故障などに直面し、設置業者が事業から徹底し、高額の投資に見合った経済性が保障されないケースが続出し、社会問題化していることだ。背景の一つは中国から輸入した安価なパネル使用で性能が維持できていない問題もある。
SDGsの機運をビジネスにしようとすること自体は悪いことではないが、荒稼ぎし、後で起きる問題に責任を持たない現象はSDGsの目標達成を阻害している。特にSDGsの問題解決には多くの新しいテクノロジーが使われるため、慎重な対応も必要だが、政府は目標達成の掛け声だけで、具体化で生じている諸問題を丁寧に追跡できていない。
耳障りのいい政策が政治家から下ろされ、机上で組み立てられた具体策が独り歩きし、実際には多額の税金を投入しているにも関わらず、目標達成とは程遠い現実もある。補助金目当てだけで群がる無責任な民間事業者がいるのを知りながら、しっかり事後管理できていないことはソーラーパネルに限ったことではない。
ESG投資が今一つ盛り上がらないのも、表面的に環境や社会、ガバナンスを重視しているように見せかけていても内容が伴わない企業が多い現実があるからだ。目標達成の進捗管理で重要なフィードバックが十分に行われず、PDCAサイクルが機能していないことも深刻に受け止める必要がある。
政府であれ民間企業であれ、ビジョンや目標設定には熟慮が必要で複雑化した社会では専門家の意見を傾聴する必要がある。それも学者のような専門家だけでなく、多様な意見を取り入れる必要がある。役人は短期間で政策を練り上げることを強いられるため、細かいことが見落とされるケースは多く、実施後の後追いもせずに改善もされていないケースは世界中どこでも起きている。
特にSDGsは大枠が重要になるために細部が見落とされる例は少なくない。かといって細部を積み上げていって目標設定するのも間違いだ。日本の場合は職人文化なのでビジョンや事業コンセプト、目標設定する人間と実施する人間を分けていないこともSDGsなど大きな目標に向かう場合は問題になる。
今後、世界のカオス化が進む可能性は高く、その中での浮き沈みも激しさを増すことが予想される。優先順位を決めるためには価値観を明確にしておく必要があるし、揺るぎない信念も重要になるだろう。
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