金融危機やコロナ禍、ウクライナ戦争でグローバル化は何度も挑戦を受けているが、それでも業種にもよるがグローバル化は確実に進んでいる。中でも、すでにグローバル企業としての経験を積んできた欧米の企業にとって、日本企業は他国にはない、無数のハードルがあることで知られている。
最近、フランスに帰国したばかりのフランス人が「自分にとって日本は4カ国目の国外の赴任先だったが、南米やインドで経験した異文化の壁は、日本に比べれば、比較にならないほど低いと感じた」「次々に理解不能なことが頭をもたげ、日本で10年以上仕事をする西洋人は尊敬に値する」といった。
中でも戸惑ったのは、日本でいう報連相だったという。「自分はアジア地域を含む市場開拓部署の責任者だったが、部下は50人はいた。彼らが自分に報告を上げるだけでなく、いちいち次は何をしたらいいか聞いてくる。中には指示がなかったといって半日何もしなかった部下もいた」という。
この種の話はよく聞く話で、彼らの不満は「いつ部長としての自分の仕事ができるのか」と大いに疑問を感じ、報連相は日本企業に巣くう悪い習慣とまでいう人もいる。必要な情報は自分で集めにいくのが常識に欧米人にとって、報連相で上がってくる情報は有益に見えるが、彼に言わせれば「必要ない情報が8割で時間の無駄」と否定的だ。
最も決定的な違いは、意思決定プロセスだった。意思決定の権限を持つ自分が決めたことを絶対視するのではなく、自分たちの意見を尊重して欲しいといわれてストレスだったという。その一方で上司に評価されたい、褒められたいという気持ちも強く矛盾を感じたという。
彼が赴任当初、経験したことに自分のチームに対して「私は今のあなた方の成果にまったく満足していない」といった瞬間に、その場の空気が凍り付き、全員が目を伏せ、暗い雰囲気に変わったことだったという。最初に赴任したイタリアでも、ブラジルでも、インドでも見たことない反応だった。
中には酒の席で「部長は自分たちがどれだけ苦労してきたか知らない」といった部下もいたという。結果主義が主流の諸外国に比べ、プロセス重視の日本では、プロセスでの努力を評価してくれないと日本人はなかなか動かないことを初めて知ったという。
彼を悩ませたことの中には、上司への人間的な気遣いが異常に強いことだったという。中には好きな食べ物は何か、趣味は何かなどを聞いて、何とか上司を喜ばせようとした部下もいたという。食事会で上司の座る場所に上座があることにも驚かされた。まるで上司は神のようだと感じたという。
それに日本人の遠回しな言い方も彼も悩ませた。数年して知ったことは、相手への気遣いも原因してイエスをノーといったりすることを知った。しかし、会議を含む業務での曖昧さでいいことはないと思い、本当にいいたいことを毎回問い詰める習慣がついたという。
しかし、理解に苦しむことが山ほどあったが、日本人の仕事に対する真面目な姿勢や高い能力は、他の国にはないことを強く感じ「学ぶものも多かった」と付け加えた。欧米のグローバル企業の基本的スタンスは、できるだけ相手の文化を尊重しなければ、いい結果は得られないという認識を持っていることだ。
にもかかわらず、軋轢は起きるし、自分の常識をすべて捨てて相手に合わせるのも不可能だ。異なる文化を持つ者が協業する現場で期待されるのはカルチャーダイバーシティの効果だ。一歩間違えばカオスに陥る可能性もある一方、うまく機能すれば向かうところ敵なしの強みになる。
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