pexels-katerina-holmes-5905510

 2月22日水曜日に仏南西部サン・ジャン・ド・リュズのカトリックの私立高校で生徒の1人に刺され死亡した教師、アニエス・ラサールさんの教会前の追悼の様子が話題になっています。集まった職場の同僚や夫、親族らが突然踊りだし、その動画がツイッターで流され、現在までに200万人以上がアクセスしているそうです。

 無論、ダンスは死者を追悼するためで、それもカトリックの学校だったこともあり、追悼式は教会で行われ、参加者の涙を誘いました。批判するメディアはなく、与野党の別なく、政治家たちも感動のツイートをしました。

 殺人で起訴された16歳の生徒は公判前拘留され、検察は計画殺人として捜査を開始し、捜査はバイヨンヌ司法警察に委ねられたと伝えられます。事件は生徒の1人がスペイン語の授業中、いきなり立ち上がり、同級生の前で教師に切りつけたもので、フランス中を震撼させました。

 容疑者はイスラム聖戦思想に感化されたアラブ系移民でもなく、学校は治安のいいはずのカトリック教会が運営する進学率の高い私立学校だっただけに、なおさら国民には衝撃でした。

 仏週刊誌、ル・ポワンの最新の世論調査では、学校での暴力への対応方法について生徒と教師を保護する正しい方法について尋ね、47%が、生徒や教師の安全確保強化最優先と答え、53%が加害者の罰則強化を最重視すべきと答えたとしています。防止より罰則強化を優先すべきという意見がわずかに上回った形です。

 政府は今、校内暴力対策に取り組んでおり、教師と生徒間だけでなく、生徒間のいじめ、結果としての不登校から自殺までの防止に取り組んでいます。今回の事件は、明らかに孤立感を深めた生徒による犯行で、SNS時代が後押しした可能性は高いと見られています。

 ニース=コートダジュール大学で新しいオンライン・アラート・プラットフォームを今年1月30日から導入し、40の異なる言語でアクセスでき、内部告発者の匿名性が特に保証されています。性別に基づく暴力、性暴力、差別、ハラスメントに終止符を打つのが目的で、デジタル・シグナリングとサポート・プラットフォームを学生に提供しています。

 教授、講演者、大学職員も対象とするこの新しいシステムで、苦情収集、管理、処理を容易にすることを目的としています。

 フランスには2021年度の9月の新学年開始時に、学校での様々なハラスメント行為を防止するためのpHAReプログラムが開始され、2022年には同プログラムは全ての小学校から大学まで拡大しています。

 同プログラムの要旨は1、学校の雰囲気を測定する。2、いじめ現象を防止する。3、生徒や学生のための専門家とスタッフによる保護コミュニティーを作ること。4、いじめの状況に効果的に対応する。5、両親や保護者を巻き込んでプログラムを協議する。6、全ての活動を監視する。7、リソース専用のデジタルプラットフォームを提供するなどです。

 現在は大学から始まった被害者の学生がアンバサダーとなって、被害者の相談に乗るシステムが小学校まで広がっています。保護者、教師だけでなく、地域社会を巻き込み、全ての人々がいじめに関心を持ち、阻止するために動くというもので、根底にはいじめで自殺した何人かの未成年者への強い思いがあるからです。

 無論、このプログラムは始めたばかりで試行錯誤状態です。それに今はSNSといういじめの新しいツールが脅威を与え、いじめがゲーム感覚になっていたりします。そのゲームが若者の心に暴力性を浸透させている現実もあります。さらにフランス中の未成年者に薬物が蔓延し、家庭崩壊して保護者が機能していない場合もあります。

 政府も専門家も教師の特別なトレーニングが必要と指摘しており、フランス被害者協会(FVA)の報道官オリビア・モンス氏は「子供たちは幼い頃から共感、尊敬、連帯の概念を統合する必要があり、教師も教育者も訓練されなければならない」と指摘しています。

 さらに「生徒の後ろには家族や学校で暴力に苦しんでいる可能性のある子供やティーンエイジャーがいて、教師が目を閉じて自分の持つ技術的および専門的スキルの後ろに隠れていることはもはや許されない」と主張しています。