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  抗議デモを伝えるル・パリジアン紙

 年金改革で騒乱が続くフランスで、一体何が起きているのか。大都市がゴミの山と化し、町をネズミが駆けずり周り、抗議デモが絶えないフランスはどうなっていくのか。議会で過半数を持たないマクロン政権は求心力を失い、政権運営は危機に瀕しているようにも見えるが、どう乗り越えていくのか。

 62歳だった年金受給開始年齢を64歳に引き上げることを骨子とした年金改革は、少子高齢化が進み、年金制度を支える年金保険支払い者の現象で、選択の余地はないとマクロン大統領は説明する。しかし、一旦勝ち取った既得権益は死んでも手放さないという精神のフランスでの改革は非常に難しい。

 政府は最後は憲法49条3項を発動し、強引に改革法案を可決し成立させた。反発した野党は9回目の抗議行動で挫折し、議会の審議という民主主義の手続きを軽視して法案が成立したことに抗議し、議会で非難動議がなされたが、わずか9票で否決され、次は野党・右派の国民連合が政府への不信任案を出す予定。

 そもそも49.3条とは何か。国家国民にとって安全保障上の緊急事態や国民生活に重大な影響を与える事案などで、議会での十分な審議を経ずして政府が法案を可決・成立させることができるという憲法がフランスには存在する。当然、民主的手続きを踏まないために民主主義を骨抜きにする条項と批判され、政府は余程のことがないと決行しない。

 実は退職年齢を巡っては、元凶といわれる左派のミッテラン政権が1982年に60歳に引き下げて以来、何度も引き上げようとして、過去にはサルコジ政権がようやく62歳に引き上げた経緯がある。性善説を信じる日本人なら、政府の説明に科学的根拠があれば、最初から反対ありきの野党はともかく、理性的に受け止め、フランスのような猛反対はしない。

 しかし、性悪説のフランスでは政府の説明を容易に受け入れない。国家予算がどう使われているかに疑いの目を向ける国民は多い。計算上、年金に充てる国庫がひっ迫しているといっても信じない。限りなく個人や組織の欲望を追求する資本主義を疑問視するフランス人は、権力者に常に好戦的だ。

 とはいえ、良識て国民は少なくないので、政府に言い分に理解を示す国民も少なくない。週末以外のデモやストライキに参加すれば、その日の給料は受け取れない。結果的に単身者は関係ないが、家族を持つ世帯のデモ参加率は多いとはいえない。

 今後はどうなっていくのか。法案は法的には承認されたが、マクロン、ボルヌ政権への不満は過去になく高まっているので、求心力を失ったマクロン氏は同改革案の正当性を証明するため憲法評議会にかけるとしている。与党や与党寄りの政党代表との話し合いを続けるとしている。

 一方、野党は法案が成立しても抗議行動を続けることを宣言している。とはいえ、参加者は確実に減るだろうから、抗議行動は精鋭化する可能性は高い。事実、山積みされたゴミへの放火も始まっている。改革を支持した議員の事務所も襲われたりしている。

 先週、抗議デモに参加した1人が「政府はわれわれを死ぬまで働かせる気だ」と語気を強めた。フランスで、一体何が起きているのか。大都市がゴミの山と化し、町をネズミが駆けずり周り、抗議デモが絶えないフランスはどうなっていくのか。議会で過半数を持たないマクロン政権は求心力を失い、政権運営は危機に瀕しているようにも見えるが、どう乗り越えていくのか。

 62歳だった年金受給開始年齢を64歳に引き上げることを骨子として年金改革は、少子高齢化が進み、年金制度を支える年金保険支払い者の現象で、選択の余地はないとマクロン大統領は説明する。しかし、一旦勝ち取った既得権益は死んでも手放さないという精神のフランスでの改革は非常に難しい。

 政府は最後は憲法49条3項を発動し、強引に改革法案を可決し成立させた。反発した野党は9回目の抗議行動で挫折し、議会の審議という民主主義の手続きを軽視して法案が成立したことに抗議し、議会で非難動議がなされたが、わずか9票で否決され、次は野党・右派の国民連合が政府への不信任案を出す予定。

 そもそも49.3条とは何か。国家国民にとって安全保障上の緊急事態や国民生活に重大な影響を与える事案などで、議会での十分な審議を経ずして政府が法案を可決・成立させることができるという憲法がフランスには存在する。当然、民主的手続きを踏まないために民主主義を骨抜きにする条項と批判され、政府は余程のことがないと決行しない。

 実は退職年齢を巡っては、元凶といわれる左派のミッテラン政権が1982年に60歳に引き下げて以来、何度も引き上げようとして、過去にはサルコジ政権がようやく62歳に引き上げた経緯がある。性善説を信じる日本人なら、政府の説明に科学的根拠があれば、最初から反対ありきの野党はともかく、理性的に受け止め、フランスのような猛反対はしない。

 しかし、性悪説のフランスでは政府の説明を容易に受け入れない。国家予算がどう使われているかに疑いの目を向ける国民は多い。計算上、年金に充てる国庫がひっ迫しているといっても信じない。限りなく個人や組織の欲望を追求する資本主義を疑問視する国民は、権力者に常に好戦的だ。

 とはいえ、良識て国民は少なくないので、政府に言い分に理解を示す国民も少なくない。週末以外のデモやストライキに参加すれば、その日の給料は受け取れない。結果的に単身者は関係ないが、家族を持つ世帯のデモ参加率は多いとはいえない。

 今後はどうなっていくのか。法案は法的には承認されたが、マクロン、ボルヌ政権への不満は過去になく高まっているので、求心力を失ったマクロン氏は同改革案の正当性を憲法評議会にかけるとしている。与党や与党寄りの政党代表との話し合いを続けることを表明した。

 一方、野党は法案が成立しても抗議行動を続けることを宣言した。とはいえ、参加者は確実に減るだろうから、抗議行動は精鋭化する可能性は高い。事実、山積みされたゴミへの放火も始まっている。改革を支持した議員の事務所も襲われたりしている。

 先週、抗議デモに参加した1人が「政府はわれわれを死ぬまで働かせる気だ」と語気を強めた。フランス人の平均寿命は80歳、「とにかく働きたくない」フランス人は、働く年齢が1年でも延びることは死刑宣告でも受けたような騒ぎとなる。