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 パリに本部を置く国際NGO 国境なき記者団(RSF)は第 21 回世界報道自由度指数を 5 月 3 日に発表しました。7年連続首位のノルウェーに対して、対象180カ国・地域のうち、日本は昨年から3つ順位を上げて68位ですが、先進7か国(G7)の中でも最も低い結果でした。

 評価基準は、多様性(pluralism)、メディアの独立性(media independence)、メディア環境と自己検閲(media environment and self-censorship)、報道に関する立法の枠組み(legislative framework)、透明性(transparency)、メディアのインフラ品質(quality of the infrastructure that supports the production of news and information)となっています。

 昨年から大きく順位が変動した国々が目立ち、クリストフ・ドロワール事務局長は「多くの国で権力の攻撃性が高まり、インターネット上や現実の世界で記者に対する敵意が増している結果だ」と指摘した。結果的に報道の不自由度が最も高いのは北朝鮮です。

 そもそも国を統治する権威主義の北朝鮮政府は、独立したジャーナリズムを禁止しています。マスコミの唯一の認可された情報源は、国の代弁者である朝鮮中央通信社 (KCNA) です。海外の報道機関の取材は厳重に監視されており、RSFによれば、何人かの外国人ジャーナリストは、報道で党の方針に従わなかったために強制送還または殺害されたと指摘しています。

 当然ながら中国、ロシア、イランなどの権威主義国の言論は厳しく統制されており、地域ランキングでは「マグレブ・中東地域は依然としてジャーナリストにとって最も危険」であり、ヨーロッパは「ジャーナリズムを実行するための条件が最も容易な地域」と指摘しています。

 この数年の新しい現象は、フェイクニュースの問題です。調査された180か国の 3 分の 2 で「大規模な偽情報またはプロパガンダ キャンペーン」への「政治的アクターの関与」が報告されているとしています。特にロシア、インド、中国ですが、政府や企業に代わって、専門の企業による「大規模な操作作品」を目の当たりにしていると指摘しています。
 今年2月、調査ジャーナリスト集団「フォービドゥン・ストーリーズ」による大規模な調査により、偽情報を専門とする「チーム・ホルヘ」と呼ばれるイスラエル企業の活動が明らかになりました。

 日本がいつも低い理由は、2021年版が発表された時、RSFは「菅義偉首相(当時)が、報道の自由のために何もしてこなかった」という点を挙げていました。日本の場合は伝統とビジネス上の利益への影響のため、報道の自由度が低下している点が指摘されています。

 日本に敷かれるテレビの報道自主規制など、明文化されていない政府とスポンサー企業に対する忖度がランキングを下げる要因になっているということです。それに欧米に比べ、正義という概念が薄いことが自由度を下げているともいえます。

 しかし、RSFはもともとリベラルで反権力、反大企業の政治的色合いのフィルターがあるといわれています。報道の自由は民主主義の成熟度を表すともいわれていますが、RSFのランキングでは民主主義が成熟しているといわれるアメリカが40位以下というのも考え方の違いが表れています。

 最近、ChatGPTの政治思想の傾向を調査した結果が公表され、情報ソースの6割以上がリベラルな情報源という報告がありました。これはChatGPT自体のAIのアルゴリズムの問題というよりは、リベラル系の方が保守系より圧倒的に発信量が多いことを物語っているといえそうです。

 ただ、そうはいっても日本の報道の自由度の低さは気になるところです。多くの外国人記者が「日本では問題が浮上しても、いつの間にか霧の中に消えていく」「隠すのが得意}と指摘しています。そもそも反対意見を述べること自体が社会慣習として良くないこととされる日本では、その多様性の拒否、村社会的閉鎖性を脱却しなければランキングが上がることはないでしょう。