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 日本は中国の台湾有事に対して、「そんなことは起こりえない」「軍拡推進派が危機感を煽っているだけだ」「今こそ平和憲法を守るべき」という意見もあります。では世界でいったい何が起きているのか、不戦の誓いを盾に世界の問題に78年間もコミットしてこなかった日本は世界をどのように理解しているのでしょうか。

 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、ロシアがウクライナに侵攻した後「冷戦後に作られた枠組みは根本的に壊された」との見方を示しました。では、冷戦後に作られた枠組みとは何だったのでしょうか。それは社会主義ソ連の脅威がなくなったことでイデオロギーで分断された世界から、経済協調時代に入ったということでした。

 様々な対立はあっても経済依存を深めさえすれば、戦争が起きる緊張は和らぎ、多文化共存社会が実現できるという認識が強まり、一気にグローバル化が加速しました。それでビジネスの世界は活気づき、新たな希望が生まれたと受け止める人が圧倒的に増えました。

 ところが結果は経済依存度を高めても互いが異なる価値観を尊重し合い、共存する方向には行かず、覇権主義の中国は密かに世界支配の中華思想の野望で世界秩序について「アメリカおよび西洋が自分たちの利権のために勝手に作ったルールは破壊すべき」と動き出し、ロシアも同じ認識で東西冷戦後の枠組み破壊に動いています。

 そのためには手段を選ばない中露、イラン、北朝鮮などの専制主義の国々は力を蓄え、西側が築いた一線を越えたのがロシアのウクライナ侵攻でした。この行為がもたらした影響は極めて大きく、特にプーチン露大統領が核兵器使用をちらつかせていることが決定的となっています。

 それは核抑止という考えを根底から揺るがしているからです。核保有国が前提とする「抑止のみが目的で、決して使われない最終兵器」との認識には人々の善意があったわけですが、ロシアが核兵器を脅迫材料に使う今、その前提は崩壊し、本当に使われるリスクが高まっています。

 核軍縮や核廃絶とは、全く世界は逆の方に動き出しているということです。これは通常兵器を使用した戦争の安全保障の考え方とは全く次元が異なる事態で、今まで欧米を中心に莫大な資金を投じてウクライナに武器供与を行ってきた努力を吹き飛ばす内容です。

 これを見て中国や北朝鮮は核兵器は抑止でなく、威嚇、脅迫に使える事実を目の当たりにしているわけで、広島、長崎の経験は空しいものになりつつあるのが現実です。ロシアが戦略核兵器をたとえ小規模でも使用すれば、第三次世界大戦は必至でグローバル化は吹き飛んでしまうリスクにさらされています。

 アメリカを中心に構築されたと中露、イラン、北朝鮮が考えるルールの変更に核兵器が使われる事態は、目の前にあるといえるでしょう。ところがその事態を深刻に受け止め、阻止するために本気で動く国はありません。自分は一切手を汚さない日本だけでなく、すべての先進国で平和ぼけ状態が続いています。

 そもそも、なぜ、中露、イラン、北朝鮮は被害者意識に凝り固まったかといえば、18世紀、19世紀の帝国主義時代に欧州列強国や日本が力による現状変更を行い、資源を奪い、人を奴隷化したことにあります。その間違いを正面から論じたことは未だありません。

 中国だけでなくグローバルサウスの国々もその被害者であり、未だに彼らの恨みは解けていません。彼らが見る世界は、やはり欧米列強に都合のいいルールが構築されているという世界観は根強く残っています。無論、恨みや怨念によってゆがめられた認識ですが、簡単には変えられません。

 問題はソ連帝国が崩壊した後、資本主義や民主主義をロシアに持ち込むプロセスを間違えたことです。先進国が採用する主義は、自由主義によって裏付けられているわけですが、その前提にマックス・ウェーバーが主張する高い倫理が必要です。

 民主主義を1度も経験していないロシアにそんな社会的倫理感は育っていません。それで急激に自由化すれば、腕力の強いヤクザやマフィアが表舞台に出てきて大富豪となり、オリガルヒと呼ばれ、それを強権のプーチンがコントロールする真ロシアが誕生し、今に至っています。

 所詮、オリガルヒに倫理道徳を持たせるのは無理な話で、西側が民主化のプロセスとして仕方がないと見ていたら、その力は肥大化し、彼らを悪用する政府は、今度は軍もマフィアにような民間軍事会社が登場し、政府も彼らを利用する事態となり、今では冷戦時代の方が良かったという人もいるくらいです。

 結論からいえば、世界から倫理道徳が消えれば核戦争は避けられないということだと思います。通常はそれは経済ではなく宗教の役割ですが、世界中で反宗教、反規範のリベラル化がエスカレートし、世界は危険な淵に立っている現実はますます厳しさを増しています。