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 一昔前の日本では政治家、官僚、企業幹部になる女性たちの多くは男性化し、中性的でした。地味なダークスーツで身を固め、ショートヘアか、長い髪をしっかり括っていた。それより何より性格が男性と見まがう女性が多かったし、権力志向だったり、高圧的だったり、独裁的な女社長が一般的なイメージでした。

 女性自身がそれに苦しんできたはずが、悲しいことにミイラ取りがミイラになった感もあったし、昇進するには男になるしかなかったという話はよく聞きます。管理職になるには女性であることは捨てるしかないとも言われます。

 背景には仕事で成果を出すには性別による能力差がないことを示す必要があるからという意見もあります。

 それに、逆に「女性らしさを有効活用するべき」といって女性らしさを押し付けられるのは迷惑だし、ストレスを感じるという女性も多いといわれます。そもそも世界1の男性中心社会を続けてきた日本ならではの特有の問題があるのは事実です。

 日本のジェンダー問題を研究する複数のフランス人や英国人が、男性が妻子を養うのが当然という慣習がある以上、男性に養われる方が楽だし、子育てや家事で空いた時間を好きな趣味に使う選択の方が満足度が高い人生を送れるという知恵が散見され、利口な考えかもしれないと指摘しています。

 しかし、そもそもやはり、男女の性別による違いは歴然として存在し、一般的には男性は仕事中心に生きる性質が強く、女性は生活を豊かにする才能に秀でているといわれています。ワークライフバランスは、その意味で男女のバランスにもつながる考えかもしれません。

 職場で見かける男性化した女性に正直違、強い和感を持ってきた私は、そもそもの責任は男性にあると考えています。日本社会が男性が作ったルールや常識で動いているのは確かです。

 実際、中国をはじめ、アジア地域で出会う女性管理職の多さに驚かされることがあります。タイなどは男性より女性の方が勤勉といわれ、女性を採用したがる企業が多いのが実情です。バングラデシュのイスラム教スンナ派の信仰を持つシェイク・ハンナ首相は女性で「強い意思と信念の人」といわれています。

 日本は先進国でありながら、女性活躍が最も遅れた国であり、これが日本社会の硬直化に繋がっていると何度も指摘されながらも、大きく変わる気配はありません。ただ、はっきりしていることは女性が国や組織のトップに就いたことで生産性が落ち、士気が下がった例はほとんどありません。

 すでに結論は出ており、仕事と子育てがストレスなくできる社会の仕組みの構築が急務ですが、現状維持の保身に走る人は逆に増える一方のようです。

 子育て支援を防衛強化と並び、最優先課題といいながら、予算も財源も定まらず、その責任を担う子ども家庭庁は省ではなく庁扱いで、主要閣僚にも入っていません。これが自民党の意識です。

 仕事病の日本はライフワークバランスを回復し、価値観そのものを仕事ではなく、家庭やプライベートにバランスシフトすることは、日本再生の鍵を握るものです。その明確なヴィジョンがあれば、女性活躍社会実現を難しく考えることはないはずです。