コロナ禍明けのウクライナ紛争に続く、イスラエル戦争、日本は今、世界最大の軍事大国がウクライナとイスラエルの防衛に同時に関与する中、台湾有事が手薄になる不安を抱えています。
アメリカのプレゼンスが弱ったとはいえ、欧州連合(EU)のボレル外交上級代表は「アメリカのウクライナ支援が途絶えれば、欧州はアメリカの代わりはできない」と述べました。
つまり、アメリカのウクライナ支援規模は、英国を含む欧州28か国を合わせた支援よりも大きいということです。そこに今度はイスラエル危機に対して、アメリカは全面的支援を表明し、ウクライナより明確な意志を示しています。アメリカは躊躇なく、イスラエル政府が打ち出すハマス壊滅作戦に本腰で参加するでしょう。
そこで思い出すのは、第2次湾岸戦争の時に当時、米国防長官だったラムズフェルド氏が記者団から、「湾岸戦争を戦いながら、アフガニスタンのタリバン掃討作戦の2面戦争を同時にアメリカは戦えるのか」という質問に「イエス」と答えた記憶が蘇ります。
今回はもし、ウクライナ、イスラエルに加え、台湾有事が起きた場合、3つの大規模戦争にアメリカは対応できるのかという疑問が浮上しています。ただでさえ、ロシアによるウクライナ侵攻で、液化天然ガス(LNG)などのエネルギー価格は高騰しました。
エネルギー価格が不安定化すると、多くのエネルギーを生産で必要とする産業は深刻な影響を受けます。 火力発電の燃料となるLNGを海外に依存する日本も影響を受けました。特に日本経済を下支えする中小企業を直撃しています。
さらに輸入大国日本にとっては、国際的な長距離輸送の高騰にも繋がっています。イスラエル危機がエスカレートし、アメリカとイランの対立が激化すれば、ホルムズ海峡が閉鎖され、日本は原油供給に深刻なダメージを与えます。
さらにイスラエルには、最先端のハイテク産業が集積しており、日本企業もすでに影響を受けています。イスラエルの戦争化は、敵対するイスラム圏の国々の反発を買っており、彼らによるテロが世界に広がる可能性があります。西側諸国が早期解決に動いている背景の一つはテロを封じ込めたいからです。
加えて台湾有事が発生すれば、中国、台湾にビジネスで大きく依存する日系企業は経済活動そのものが維持停止に追い込まれる可能性があります。国外の紛争には一切かかわらないという不戦の誓いを憲法に掲げる日本ですが、直面する現実は十分に国際紛争の影響を受けており、戦争はビジネスとは無縁という論理は通用しなくなっています。
それでも武力紛争には一切かかわらないというならば、外交力が問われるわけですが、武力行使なしに紛争解決の仲介で日本がノルウェーなどのように大きな役割を果たしたことはありません。民族や宗教対立のような根深い問題を抱える紛争解決で日本は国際的評価を得ているといえません。
今、多くの国々がウクライナ紛争、イスラエル戦争でどちらかに支援を表明しているのは国益あってのことです。グローバルサウスの国々がウクライナ紛争でロシア制裁に明確な態度を取らないのも国益を考慮しているからに他なりません。
日本の紛争仲裁能力の低さの原因は、日本自体が態度を明確にしない八方美人的態度にあると考えられます。いずれにしても明確なスタンスを持たなければ、信頼獲得は無理です。何を支持し、何を支持しないかという価値観を持たなければ、紛争の時代を良く抜くことはできないでしょう。
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