Diversity

 毎日、ニュースはいつイスラエル軍がガザに本格的な地上軍を投入するかでもちきりです。しかし、グロ−バルマネジメントの視点から見て、状況は最悪というしかありません。特にビジネスと異なり、ダイバーシティの観点では国益や宗教・民族が交錯する中では、ダイバーシティはメリットよりデメリットの方が目立ちます。

 とはいえ、ビジネスのグローバル化で得た知見は、少しずつでも政治外交に活かすべきです。イスラエルからの最新の報告で、仏国営TVフランス2が現地取材した報告では、イスラエルにある病院ではイスラム系アラブ人とユダヤ系の医師や看護師が今でも協働しており、イスラエル人負傷者もハマス負傷者も平等に治療を行っている現場を紹介していました。

 その病院ではアラブ人の医師にユダヤ人のインターンが助手として附き、イスラエル兵の治療も行っている様子が紹介され、逆にユダヤ人医師がハマスの負傷兵を治療したとの証言がありました。病院内にはスカーフを着用したイスラム女性看護師が働いている姿も映し出されました。

 一方、イスラエル国内のユダヤ系、パレスチナ系住民が住む村では、パレスチナ人がハマスの攻撃にさらされるユダヤ人たちを命懸けで救出する例を取材し、その人物はイスラエルで英雄になっていると報じました。無論、パレスチナ側から殺害予告があったりしているとも付け加えられました。

 最後に、フランス2の特派員が「ユダヤ人、パレスチナ人双方が一緒に暮らす村では、深刻な対立は起きていないとまとめました。大変興味深いレポートでした。

 ダイバーシティマネジメントの基本は、まず、共通の目標やヴィジョンを共有することです。小さな村で共存する基本は安全と平和を守り、助け合うことです。生活において宗教的価値観は異なっても、平和に暮らすことは共通しており、日々接触があることで、長い時間をかけて違いから生じる摩擦は和らげられているわけです。

 フランスでも学校内はダイバーシティです。白人フランス人も北欧出身者、スラブ系、ゲルマン系、ラテン系、東洋人など様々で、そこのアラブ系、黒人などが加わり、クラスの中はダイバーシティの訓練上です。彼らは成長する間に異文化耐性が身についています。

 そのダイバーシティによる共存を最も妨げているものは何でしょうか。それは民族や宗教の優劣を争うこと、特に選民意識です。私はノーベル平和賞を受賞したイスラエルの元首相の故シモン・ペレス氏が仏ルモンド紙のインタビューで、「われわれユダヤ人は建国以来、隣人であるはずのパレスチナ人の苦痛を考えたことはなかった」と言った言葉が今でも忘れられません。

 強烈な選民意識を持つユダヤ人は、他宗教を蔑視しており、今回、イスラエルの国防相は「ハマスは猛獣なので殺害してかまわない」と公言しました。選民であるイスラエル人を大量虐殺したハマスを許すはずはありません。下手をすればイスラエルのガザ攻撃は最悪民族浄化に発展しそうな勢いです。

 西洋諸国の帝国主義もキリスト教の優位性を示すことが根底にあり、多くの非文明国で人道に反することを平気で行ってきました。言い分は彼らは野蛮だから奴隷にしていい、資源は奪って構わないという論理が横たわっていました。異文化を尊重する姿勢はゼロです。

 今は中東の長年の混乱の陰に英国の国際法に触れる違法な行為があったことは否定できません。民族や宗教の優劣を持ち出して共存することは不可能です。自分たちが最も高度な文明を持っていると自負するなら、目には目を歯には歯をという野蛮な考えは捨てるべきでしょうし、攻撃を受けても無抵抗主義を貫く覚悟が必要でしょう。報復は正当化できないはずです。

 イスラエルの病院や村から学ぶものは、日々、地味な努力を重ねて異文化を超えた関係を構築することだと思います。どっちが正しいか、どちらが優れているかを競うような意識では、カルチャーダイバーシティのシナジーを引き出すことはできないということです。