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 日本的経営の特徴の一つは組織に対する忠誠心です。そもそも組織優先の日本文化の中で儒教的影響もあり、リーダー(主人)に仕える下僕(しもべ)のような精神が働き、忠誠心は組織の目的に対してではなく、主人の意向にいかに従うかが重視されてきました。それが忖度文化も生んだといえます。

 最近、発表された米ハーバードビジネスレビューで、組織変革の世界的に知られたティモシー・R・クラーク氏の論文「率直な意見を言える組織へと変化する方法」の中で、世界中の組織の大規模調査で率直な意見を述べることは自分の評価や地位を脅かすリスクがあると考える人が多いという指摘がありました。

 日本のように「1つになる」ために自分の率直な意見は極力控え、全体の意見に自分を合わせる慣習が非常に長く続いた国ならともかく、欧米人も簡単には率直な自分の意見を述べることに躊躇するという話は、私の欧米での経験から分かっていたことですが、改めて言われると感慨深いものがあります。

 クラーク氏の主張は「ダイバーシティのシナジーを引き出すために会社が安易に率直な意見が言える環境づくりを深い考慮もなく口にするのは危険だ」としています。同氏は「率直な意見を言うこと」の最もリスクの高い上位6つの行動を以下に挙げています。

 1. 間違った返答をする。2. ミスをする。3. 感情を表現する。4. 反対意見を述べる。5. 間違いを指摘する。6. 現状に異議を唱える。

 クラーク氏は率直な意見を言うリスクに安全性を担保することなく、それを求めるのは保身を高めるだけと結論付けています。そこで同氏は4つのステップで率直に自分の意見が言える環境が効果を生むための方法を説いています。

 最初は、個々人の価値と評価を分けること、つまり、仕事上の個々人の評価とダイバーシティの基本になる男女や人種などによる差別化をせず、皆、同じ価値を持つことへのリスペクトを分けることです。職場では能力が重視され、一人一人が同等な価値を持つという考えは希薄になりがちです。

 次は忠誠と同意を区別することです。日本では組織のキーワードは「一つになること」です。和を持って尊しですから当然ですが、そこに潜むリスクもあります。クラーク氏は「忠誠とは同意を意味する。それもコミットメントを求めるのではなく、チームを黙らせて、従順を求める強迫的な同意だ」と書いています。

 「同意することが忠誠の条件になると、操作された従順を生み出す。これは忠誠ではまったくない」と同氏は指摘します。つまり、内心どう思っていようと組織に対する従順が優先されるだけで、忖度して従うということで、同意は軽視されている場合が多いということです。

 その他、「地位と意見を区別する」、「許可と採用を区別する」があります。私は注目点は日本でことさらに重視される忠誠心が偽物の可能性が高いことです。それは「リーダーの方針と一つとなろう」という言葉に現れています。日本ではリーダーは神になりやすいと言われています。

 忠誠と同意を区別するとは、組織には目的があり、リーダーと部下は、それを共有して働いているわけです。その核心は企業では利潤追求であり、そのためにどれだけ結果を生み出す戦略を立て、協働するかであって、同意なしの忠誠の強要は恐怖支配でダイバーシティとは縁のない話です。

 クラーク氏は「究極的には、忠誠と意見の相違が平和的に共存する時、率直な意見を言える文化が花開く」と書いています。上司の顔色を窺く偽物の忠誠は生産性を上げることには繋がらないというわけです。