Portrait de Chiara Fancelli
 ラファエロ作、マグダラのマリアとしてのキアラ・ファンチェッリの肖像、1504年、46 x 34 cm、個人蔵 c DR

 今年10月21日、フランスの収集家らがレオナルド・ダ・ヴィンチの学派のものとされるマグダラのマリアを ロンドンのギャラリーからオンラインで約35,000ユーロ(約560万円)で購入しました。バイヤーはフィレンツェのダ・ヴィンチ専門家、アンナリーザ・ディ・マリアに分析を依頼した結果、どうやら、ラファエロ(1483-1520)の作品の可能性が高いことが分かりました。

 研究者らによると、当時人気のマグダラのマリアを描いたと思われる作品は、ラファエロがモデルとしたペルジーノの妻であるキアラ・ファンチェッリの特徴を備えているとしています。使われた絵の具の科学的分析からもラファエロの作品の可能性が極めて高いとしています。

 もし、ラファエロの作品であれば、オークションにかければ数百万ユーロ(数十億円から数百億円の値が付く可能性もあるとされます。それより、巨匠の作品が500年以上を生き延びてきたことに興味は尽きません。

 ラファエロと言えば、今年4月に明らかになったバチカン宮殿に描かれた最晩年の大作「ミルヴィアン橋の戦い」の習作デッサン「馬に乗った騎手と馬の頭と目」も新たな発見でした。紙に赤チョークで描かれた下絵はラファエロ最晩年の貴重な資料です。

 巨匠が描いたことが証明されただけで、価格が1000倍になったのはレンブラントの「賢者の礼拝」(1628年頃)で、2021年に1万ユーロ(約162万円)の値が付いた作品が今年12月のオークションで1700万ユーロ(約27億円)の値が付くと予想されています。

 今年7月、競売人フランク・ピュオーは、南仏モンペリエきた100キロにあるセヴェンヌ村で個人の財産目録を作成している時に歌川広重(1797-1858)の版画3枚を偶然発見しました。版画は新聞紙にくるまれ食器棚の奥に眠っていました。

 見つかった版画は当時の版画で、作品には版元の魚屋栄吉と蔦屋吉蔵(広栄堂)の名前が記されていた。8月3日にニームのオテル・デ・ヴァントでオークションにかけられ、コレクションは115,000ユーロ(約1850万円)と32,000ユーロ(約515万円)で落札されました。

 ほんの数カ月間で、名画が発掘されるヨーロッパ、作品を残して他界した巨匠たちが、まるで見つけてほしいと導いているような話が数多くあることに興味は尽きません。 

 一方、 今年9月12日、オランダのフローニンゲン美術館は、2020年に盗難にあったフィンセント・ファン・ゴッホの絵画が発見されたと発表しました。この作品は現在アムステルダムのゴッホ美術館にあり、美術館に戻る前に鑑定を受ける予定だといいます。

 2020年3月にユトレヒトの北30キロにあるシンガー・ラーレン博物館から、フローニンゲン美術館から貸与されたゴッホの「春のヌエネン中老会庭園 」が盗まれた。翌年、アムステルダムの運河の端にある小さな場所でイケアのバッグに入れられて発見されています。犯人は収監されている麻薬王とされています。

 最近では、ニューヨークのオークション会社「サザビーズ」で11月8日、ピカソの絵画「腕時計をした女」が約210億円で落札されました。最近は中国のバイヤーが投機目的で購入する例が多いので、作品が公にならない事態も多くありますが、美術本来の目的が損なわれるのは嘆かわしいことです。