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 自戒を込めて言えば、私個人は過去には人に物事を伝えるのにネガティブアプローチ(否定表現)が多かったことを後悔しています。人のせいにするつもりはありませんが、親の世代は戦中派で命の危険にさらされた経験が多いだけでなく、戦争に負けたため、トラウマを抱え、ネガティブアプローチが主流でした。

 母は満州で戦後2年間も無政府、無警察状態の大連で過ごした恐怖が障害消えることはなく「まじめに勉強しなければ人生大変なことになる」というネガティブアプローチが日常でした。子供の頃は学校内で教師が暴力を伴った叱責をするのは当たり前でした。教師の暴力が社会問題化したのは1970年代に入ってからです。

 最近でこそ、パワハラが様々な分野で問題視されていますが、昔は「愛の鞭」で片づけられていました。引き籠りの子供を身体的暴力で再生させる思想を持った教育者に預ける例もありましたが、精神医学で害あって益なしと言われ、暴力とネガティブアプローチは批判を受けて下火状態です。

 一方、Z世代は、社会人になっても、ちょっと辛いことがあるとすぐ会社を辞め、社会耐性がないと批判されています。これは戦争未経験で高度経済成長が終わり、低成長期に入った時代の親に育てられた世代で、成人するまでに極端な恐怖を感じる機会はなく、さりとてぼんやりした不安が付きまとう世代です。

 少なくとも自分を裏切りたくないので、つい本音をいって誤解されるのがZ世代で、大した個性もなく、強い志もないと言われていますが、ポジティブアプロ−チで褒められることに慣れた世代です。この30年、教育心理学の世界で「褒める効果」が強調され、ネガティブアプローチは悪者扱いでした。

 異文化コミュニケーションでは、誤解が発生しやすいので、ポジティブアプロ−チがさらに強調されますが、異文化でなくても「ほめて伸ばす」が基本になり、ネガティブアプローチはパワハラトン同義語になっています。

 当然ともいえますが、近代化が遅れ、社会が常に不安定な国であればあるほど、ネガティブアプローチは強く、暴力教師も多いという傾向があります。

 徐々に改善されたとはいえ、例えば韓国も同じで、私のアメリカに住む韓国人は、小学校は韓国の教育を受けさせようとソウルの祖父の家に子供を預けた結果、教師のネガティブアプローチにショックを受け、早々にアメリカに引き揚げました。韓国には徴兵制もあるので非常に厳しい教育が正当化されています。

 ネガティブアプローチの影響は、・気分が沈む ・モチベーションが下がる ・嫌な気持ちになる
 ・不安や恐怖を感じる ・心を閉ざす ・反発するなど悪い効果が指摘されています。上から目線の強圧を感じさせる場合もあります。一方、ある程度の緊張で相手の心を正す効果もあります。

 ポジティブアプロ−チの影響は、・気持ちが前向きになる ・モチベーションが上がる ・嬉しい気持ちになる ・期待や希望を感じる 心がオープンになるなど、良い黄河が指摘されていますが、Z世代は褒めすぎるとプレッシャーに感じ、負担になるそうです。

 コミュニケーションの研究者の中には、ポジティブアプロ−チ8割、ネガティブアプローチ2割が適切という人もいます。さらに時と場合によって使い分けることが重要という点も無視できません。ただ、過度な叱責の多くは自己中心の個人的感情の暴走である場合が多いので注意が必要です。

 動機が愛情にあり、相手を生かしたい、相手と良好な信頼関係を築きたいという気持ちがあれば、多少の叱責も効果的です。相手の人権や存在価値まで否定する上からのアプローチに正当性はないと思います。