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 フランスでは、議会で移民法改正をめぐる論争が、あまりに激しく緊張が続いているため、フランス人の政治離れも指摘されています。今、世界中の急激な変化に各国の政治が追い付かず、政治家は不都合な課題を隠蔽し、変化に正面から対応する政治力を持ち合わせていないことを隠そうとしているように見えます。

 日本でも世界でウクライナとイスラエルで戦争が同時進行し、毎日死者を出しているのに政治派閥の資金の違法性のニュースに覆いつくされ、戦争終結や気候変動、エネルギー問題など、世界が取り組むべき深刻で緊急性を要する話は置き去りにされている感があります。

 フランスの社会学者、ジャン・ヴィアールは「民主主義が危機に瀕しているのは、多くの人が民主主義が機能していないと投票に行きたくないからだ」と指摘しています。中露,
イラン、北朝鮮の独裁政治の国々の覇権主義に直面し、迅速な意思決定が困難な民主主義の弱点が露呈し、世界はさらに不安定になっています。

 圧倒的な軍事力と財政力を持つアメリカは、今でもウクライナやイスラエルの戦争の行方を左右する最も影響力のある国ですが、アメリカ議会がウクライナとイスラエル支援を承認しなければ、さらに多くの人々が確実に犠牲になるでしょうが、民主主義はアメリカ国民の手に委ねられています。

 そのアメリカ人は、実は世界にまったく関心がなく、世界の事を報道するニューヨークタイムズやワシントンポストを読み、CNNを視聴する人々はわずかです。州が普通の国の国家に相当するような国では世界どころか、他の州にも関心がありません。その有権者がウクライナ人やパレスチナ人の命を左右しているわけです。

 そんな状況で国連が機能する訳もなく、完全にユダヤ寄りの民主党政権は、ガザの犠牲者に心を動かされるより、ハマスせん滅に政治は動いています。ユダヤのアメリカ政治およびジャーナリズムへの影響力は圧倒的です。

 民主主義を危機に追いやるのは、不都合なことを隠蔽し、利権を追求する政治家たちの腐敗だけでなく、彼らを選び、彼らを支援、監視する有権者も同じ責任を負っているはずです。領収書のいらない金が必要なのは政治家だけでなく、その政治家を金で動かして利権を得たい有権者の側にもあるということです。

 政治家の中に、領収書のいらない金は政治の潤滑油と今も信じている者がいるのは、良心が長年の政治家生活でマヒしてしまったというしかありません。今でも公共事業受注のためあらゆる違法な手を尽くす企業は跡を絶ちません。

 唯一、この悪習から抜け出す方法は、政治理念の再構築と、ダイバーシティの導入です。具体的には大幅な世代交代と女性政治リーダーの導入しかないでしょう。大臣を順番待ちするシステムも終らせるべきでしょう。金で政治を操る政治への勘違いを完全に払しょくする必要があります。

 政治家の腐敗を黙認し、放置した責任は有権者にあり、有権者の欺瞞が民主主義を危機に追いやっているというべきでしょう。だからといって、民主党政権時代に見たエリートたちの頭中心の政治も機能しないことを国民は学びました。役人にはなれても政治家の器のない人間があまりにも多かったということです。

 今、有権者は政治家が自分たちの意見を中央政治に届けるより、金を欲しがる人間たちのために働く政治家に成り下がっていることを感じているはずです。腐った金に手を出すのは自殺行為という自覚が求められているといえます。