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クリスマスの日も変わることなく、ウクライナでもイスラエルでも戦争は続き、パレスチナ自治区ガザでは多くの子供たちが命を落とし、腕や足を失う悲惨な映像が流されている。

 戦争を回避してきた東西冷戦、その終結後、「政治より経済関係構築」で戦争を回避してきた主要7か国(G7)がけん引してきた世界の枠組みは、ロシアのプーチン大統領によって崩壊した。今や西側を敵視する独裁体制の中露、イラン、北朝鮮にグローバルサウスの国々も加わろうとしている。

 国連は相変わらず無力で、アメリカも内政の混乱から意思決定が遅く、欧州連合(EU)も足並みが揃っていない。そもそも経済活性化についても行き過ぎた規制強化で英国に逃げられ、キリスト教保守の旧中東欧とリベラルな西側の溝は深まるばかりだ。

 日本ではリベラルというと天皇中心の伝統的文化から抜け出そうという勢力の事を指しているが、西洋ではキリスト教の伝統的価値を脱する考えを指す。たとえばカトリックの強いアイルランドに同性愛者を公言するバラッカー氏が首相に選ばれたのはリベラルの勝利と言われている。

 かつてキリスト教保守の価値観から差別されてきた女性やLGBTの人々が、人権の名のもとに認められる流れにあるのもリベラル化によるものだ。EUの中で、イスラム教徒が差別されているのも、キリスト教的価値観からではなく、イスラム教が宗教戒律を生活の中心に置いていることが自由を妨げていると映っているからだ。

 西洋社会は、科学が社会に大きな影響を与えるようになった100年以上前から、科学的でないキリスト教は力を失い、2つの20世紀の大戦で戦場となったことが致命傷となり、実存主義や神を否定する共産主義の嵐がヨーロッパに吹き荒れ、リベラル化が急速に進んだ。

 残ったのは近代市民社会と人権思想、人道主義だけで、信仰生活を実践する人口は激減し、自由と権利を強調するリベラル化が、とりわけ西側ヨーロッパを覆っている。宗教は経済の妨げと言わんばかりだが、ヨーロッパよりはるかに宗教的なアメリカの経済力は皮肉にも衰えを知らない。

 今、検討すべきは政治が宗教を悪用し、宗教が政治を利用して命を長らえようとする流れを止め、行き過ぎたリベラル化にブレーキを踏み、リセットすることではなかろうか。われわれがイスラエル戦争で見ているのは政治が宗教を悪用し、結果、イスラエルによるパレスチナ人のジェノサイトが起きていることだ。

 これを続けると、ユダヤ人が戦後、最大の注意を払い、反ユダヤ主義の芽を強力に摘み取ってきた歴史が覆る可能性がある。人道的観点からすれば、ハマスせん滅の大義の下での一般市民の大量虐殺は認められるわけがない。政治が宗教を利用して、いい結果を生んだ歴史は存在しない。

 逆に宗教もまた、政治を利用して、民族主義を加速させる行為は、醜い結果しかもたらさない。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争ではカトリック教徒がイスラム教徒を大量虐殺した。宗教利権と政治利権が絡まった結果というしかない。

 本来、宗教には領土問題は存在しないはずなのに、イベリア半島の支配をめぐってイスラム勢力とキリスト教勢力が血で血を洗う戦争を繰り返した。軍事力で支配し、後から宗教が入っていくパターンはアフリカでも南米でも同じだった。政治は統治のために宗教を利用した。

 実は政治に利用された宗教は、随分とそのために教義を変えている。ユダヤ教の報復的正義「目には目を歯には歯を」は本来、厳しい検討の上に公正さが担保された場合にだけ報復が許されている。しかし、アメリカ外交の基本はティットフォタット(しっぺ返し)はユダヤ教の利用であり、キリスト教では禁じられている。

 アメリカは9・11同時多発テロで、その外交原則に従い、アフガニスタンを攻撃した。政治的、外交的には正しいかもしれないが、当時、福音派の論客の中には、報復に反対する人もいた。

 ティットフォタットは、防衛理論としては抑止になるが、結果的に憎悪は消えずに増幅され、恨みの連鎖でテロの脅威は世界中で消えていない。

 政治が宗教を悪用し、宗教が妥協を繰り返し、弱体化することでリベラル化が進む西側は、独裁国家に抗す力を失っている。毅然とした態度を示すには、確信を持てる価値観が必要なはずだ。中世の時代でもあるまいし、政治と宗教は距離を取り、相互に平和を構築するために支え合う関係にリセットすべきだ。

 それに政治と宗教が互いに金に走るのは最悪の状況と言わざるを得ない。宗教からいえば金で平和や天国は手に入らない。誰もが納得する普遍的価値観、良心を育てる教義を最優先すべきだろう。政治は、とかく利権を追求する世俗社会を統治しているわけだから、宗教から道徳を学ぶべきだ。

 いずれにしても、行き過ぎたリベラル化は、戦争終結には逆効果というべきだろう。宗教の社会からの追放ではなく、政治に利用されない宗教組織、互いに必要不可欠な存在を維持する政教分離、政治と宗教の関係のリセットが急務と思われる。