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 先進国中、優等生といわれたフランスの出生率の低下が止まらない状況が続いています。仏国立統計経済研究所(INSEE)が今月16日に公表した人口統計報告によれば、女性が一生のうちに生む子供の数である合計特殊出生率は2023年、前年の1.8人から1.7人を下回る数字になったそうです。

 2010年のピーク時、2人を超えていた数字は、かなり低下しているように見えます。当時は世界の先進国がフランスの少子化対策に注目し、私も経済誌「東洋経済」にフランスの詳しい家族政策を書きました。当時はフランスが長年取り組んできたきめの細かい子育て支援と移民家族の増加が功を奏しているとの分析でした。

 最新の月例報告では昨年11月時点で、17カ月連続減少が続いており、2011年から緩やかな現象が続いています。ただ、専門家の間では、生まれる子供の数の現象は、子供を産める女性人口の減少に比例しているとの指摘もあります。さらに人口統計学者のジル・ピソン氏は「出生率の増減は懸念する事態にはない」という専門家もいます。

 フランスでは1980年から1995年にかけて出生率は大幅に低下し、1993年から1994年にかけて出生率が1.66人と史上最低を記録しました。

 皮肉なことに、その15年続いた低下期間が左派のミッテラン政権14年と重なるのは偶然なのか、興味深い現象です。それもミッテラン政権は移民や弱者に手厚い社会保障を行ったことで知られています。そのミッテラン政権後、出生率は上昇を続けました。

 国立人口学研究所(INED)の研究者によれば、「出生率は7〜8年間さらに低下し、2030年から2035年の間に再び上昇するだろう」と予想しています。理由は出生ロつが上昇した1998年から2013年の間に生まれた女性が成人し、子供を産み始める時期に入るからと説明しています。

 無論、その時期にフランス経済及び世界経済がどうなっているかも重要な要素です。全国家族連合(Unaf)は、カップルへのサポートを強化すれば、出生率増加可能と、1月11日に発表された最新の報告書によると「出生率を高めたいのであれば、親が子供を持ちたいという願望を実現できるようにする必要があり、そのためにはワークライフバランスが必要」と指摘しています。

 しかし、支援の前に、そもそもカップルが子供を欲しいと思うかが問題だと、フランスの多くの専門家は言っています。つまり、人間として生まれ、家族を持って子供を育てることに強い動機があるかが、少子化対策の原点というわけです。それは単純な経済や教育への不安以前の問題です。

 例えば、欧米先進国の人口は2050年までに0.4%しか増加しないとの予想に対して、アフリカのサハラ以南では人口は2倍になるという研究機関の予想もあります。ただ、世界全体では1990 年の女性 1 人当たりの子供の数 3.3 人が 2021 年には 2.3 人に低下し、2050 年には 2.1 人にさらに低下するとの予想もあります。

 先進国での少子化は、2人目、3人目を産まない決断を下す夫婦が増えたことにあるのは明白です。そこには親自体の教育の長期化、職業の不安定化、先行きをも見通せない激変する環境などが挙げられていますが、子供を持ち、育てたいという要求が減退すれば、いくら支援しても少子化は止まらないでしょう。

 コロナ禍と戦争、自然災害が繰り返される環境の中でも、子供を産み続けるためには将来に対する自信が持てるかどうかが鍵を握っています。

 人生の勝ち組、負け組のような単純な人生の色分けは、ますます少子化を加速させるものだと思います。人生最期まで生きてみなければ分からないというのが、5人の子供を育てた筆者の感想です。