日本は年始早々、能登半島地震と自民党派閥の腐敗の露呈に見舞われ、日本周辺では台湾への中国の武力侵攻のリスクが高まり、朝鮮半島は北朝鮮が韓国への敵意をむき出しにしています。世界はウクライナ紛争及び中東戦争の長期化の難題を抱え、過去にない不確実な状況に陥っています。
さらに企業は不祥事が露呈し、日本では馴れ合いの人間関係が不正を野放しにし、確実な成長をもたらす次の一手が見えない企業は経営危機に陥っています。コロナ禍で「危機をチャンスに変える」レジリエンス力が盛んに叫ばれましたが、その基本は危機の本質を見極めることです。
今から半世紀前、左翼運動が世界を席巻した時代に問題視されたのは、既存の価値観や慣習破壊はするけれども創造はしないことへの批判でした。日本赤軍の残党のあさま山荘に立てこもり事件は、残党の仲間同士、特に兄弟、兄妹が殺し合う実態に接し、限度を超えた行動を産んだ左翼思想への嫌悪感が左翼運動離れを起こしました。
その反省から創造のない破壊は意味がないという意識に多少変換し、反体制、反権力はいい意味を持たなくなり、同時に理想実現の挫折から、人々は自分の身を守る経済だけに目を向けるようになり、拝金主義は今日まで続いています。
政治と金の問題も日本人が基本、金を中心に動く価値観から抜け出せないからです。私は知りませんでしたが、フランス人妻の話では、1970年代、フランスでは日本人を「お金が歩いている」と軽蔑したそうです。
今、世界で噴出するあらゆる問題に対して、出口は見えない状況です。世界の指導者は誰も問題を解決できず、その原因の一つは極端な共感力の欠如です。平和ボケした先進国は問題解決の基本中の基本である現状を正確に把握することすらできていません。
ダイバーシティが声高に叫ばれていますが、何でもありのダイバーシティでは問題解決は不可能なことは、多文化共存主義を追求するヨーロッパがボスニア・ヘルツェゴビナ紛争やウクライナ紛争を解決できなかったことに現れています。
唯一共有する自由と民主主義、法による支配に問題解決能力はないようです。国際司法裁判所が人権を無視した大量虐殺を繰り返すイスラエルに対して、停戦命令を出してもイスラエルは無視しています。ロシアのプーチン大統領に対してウクライナにおける軍事作戦の即時停止と、その指揮・支援する部隊・組織が軍事作戦をこれ以上行わないことを指示しても効果はありません。
効果があると思われるのは、今年の大統領選に立候補しているトランプ前大統領が、世界戦争の危機を訴えていることで、彼が大統領になれば、米国を攻撃する者は許さないという姿勢を打ち出していることです。ウクライナへのロシア侵攻を控え、絶対に地上軍は送らないと言ったバイデン現米大統領とは対照的です。
世界最強の軍事力と資金力を持つアメリカが本腰を入れて介入することは、ロシアも中国もイランも北朝鮮も望んでいません。その意味でトランプ発言は権威主義の国にとって脅威になるでしょう。口ばっかりのヨーロッパ先進国が何を言っても説得力はありませんし、恐れられてもいません。
ウクライナ紛争以降、何度か訪れたドイツで私は隣で戦争しているのに個人の豊かな生活を求めてデモを繰り返すドイツ人を見て、平和ボケが極まっていると実感します。彼らが問題解決の先頭に立つことはないでしょう。
基本的に世界で何が起きているのか正確に把握できている人はいないように見えます。現状把握は問題解決の必須条件ですが、危機に対する感性は極度に落ち、現状把握に必要な観察力や好奇心さえ薄れているように見えます。ましてや全体像を把握する能力もないようです。
経済活動というものは基本、受け身です。その受け身の経済に本来主体的であるべき政治がおんぶにだっこ状態なのが東西冷戦後の先進国です。物事を主体的に動かす主体は、せいぜいGAFAMくらいですが、彼らは世界を動かしていると錯覚しているだけで、世界を変える存在でないことは問題解決に無力なことで分かります。
破壊された後には再生があり、その再生は元に戻すことではないはずです。地震や津波による破壊を受け、同じ被害が生じる町づくりをするのは愚かです。破壊からの再生は、一気に改善するチャンスです。すべては新たなヴィジョンが再生の鍵を握っています。
自民党の派閥解消問題でお金の問題から目をそらせようという政治家も多い中、専門家なメディアから誰も「政界再編」議論が出ないのも残念です。今の時代に合わない政党なら、さっさと政界再編すべきでしょう。そもそも自由党と民主党が結合した自民党は本当は政策重視の政党の体をなしていませんでした。
政党自身は時代に合わせて解体したり、新しい党を作ることも必要でしょう。そんな議論が出てこないところで政治改革を論じても何も変わるはずはないと思われます。ここでも日本が置かれている現状を正確に把握できていないという欠陥が見えてきます。
共感力と好奇心があってこそ、正確に現状把握ができ、新たなヴィジョンを構築でき、最終的にレジリエンスをもたらすことに繋がると考えるべきでしょう。
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