Damage_in_Gaza_Strip

 昨年10月、パレスチナのテロ組織ハマスがイスラエルに史上最大規模の攻撃を行って以来、イスラエル軍の報復攻撃(イスラエル側はハマスせん滅作戦と主張)は止まるところを知りません。すでにハマスの攻撃で亡くなったガザ住民はイスラエル側犠牲者の10倍以上に達しています。

 この戦争の結果、石油や物資の重要な輸送ルートとされる紅海でイエメンのフーシ派による大型タンカーの度重なる攻撃でアフリカ南端経由に輸送ルートが切り替えられ、輸送費高騰でヨーロッパ経済は直撃されています。

 ただでさえウクライナ紛争で支援負担を強いられるアメリカは、今度はイスラエル支援が加わり、今後、中国が仮に台湾への軍事侵攻を決行した場合、あるいは北朝鮮が韓国へのミサイル攻撃を行った場合、西側先進国の戦争への負担は確実に増大することが予想されます。

 四国くらいの大きさしかない国が国際社会に与える影響は、実は1948年の建国以来、常にありました。米9・11同時多発テロも主導したビンラディン(死亡)は、テロ決行に「グラナダの悲劇を繰り返すな」と言いました。パレスチナのテロ組織が使う文言で、イベリア半島を追い出された最後のイスラム勢力の砦がグラナダでした。

 イスラム聖戦主義過激派にとって、パレスチナ紛争は彼らの原点であり、イスラエル軍およびユダヤ人は彼らの最大の敵です。対立する両陣営は人心掌握に最も有効な宗教と民族主義を利用し、激しい対立を続けてきました。しかし、裏ではイスラエル及びアメリカがハマスを支援した過去もあります。

 理由はパレスチナ側を分裂させ、弱体化するためでした。イスラエル建国を実現したユダヤ勢力は、戦後一貫してメディアや司法に有能な人材を送り込み、国際世論から反ユダヤ主義を排除するため、多大な努力を続けてきました。

 日本では縁遠いようですが、1990年代、ホロコーストはなかったとする記事を掲載した雑誌「マルコポーロ」が国際ユダヤ組織の圧力で廃刊に追い込まれました。言論の封殺はアメリカ民主党だけでなく、ロシア、中国、ユダヤ勢力、イスラム勢力、さらには極左グループで横行しています。

 この問題を読み解くためには政治と宗教、経済利権、さらには土地を巡る主権問題を含め、単純ではない対立を見ていく必要があります。このまま、もし、イランが中東紛争に参戦すれば、世界戦争は避けられないでしょう。その意味でイスラエルは意までも世界の火薬庫と言えます。

 現状把握が困難で出口も見えない中東情勢ですが、宗教や民族主義が対立を激化させてきたというよりは、政治と経済に利用されてきたという視点が重要でしょう。ハマスにイスラエルが支援した過去にはパレスチナの分断があり、パレスチナ自治区への入植活動には宗教と経済が入り込んでいます。

 分かりにくくしているのは、宗教的大義としては、旧約聖書にある「乳と蜜の出る神が準備した地」を奪い合いっているわけですが、パレスチナには冷戦時代に共産主義イデオロギーも入り込みました。そのため政治や経済利権が大きく影響しています。つまり主権を奪い合う対立が肥大化し、共存を妨げているわけです。  

 今、イスラエルは戦後最大の危機に瀕しています。それはネタニアフ政権が続けるガザ攻撃が国際世論を完全に2分しているからです。ハマスせん滅のためにガザの一般市民が犠牲になるネタニヤフ政権容認する勢力と、たとえユダヤ人を擁護してもガザ攻撃を人道上許されない行為と批判する勢力の対立は深まるばかりです。

 多くのイスラエル市民は人質解放に注目していますが、ネタニヤフ氏はハマスせん滅まで攻撃を続ける覚悟です。自分で支援し育てたハマスが牙をむけば、完全せん滅まで戦うイスラエル側の正義にも矛盾が残ります。ネタニヤフ政権を支えるユダヤ教超正統派はガザを入植地としてイスラエルが統治する主張を始めています。

 この問題を和平に導ける物が1世紀の世界のピースメーカーになるのは確実と思われますが、日本は自民党内の腐敗の露呈で、役に立ちそうにないのは残念というしかありません。