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 今年は選挙の都市で直近では3月にロシアの大統領選が実施され、年末にはアメリカ大統領選が行われます。ロシアの選挙は強権のプーチン政権を打破できるまでの大物が立候補者がおらず、あるいは立候補が阻止されており、プーチン再選の流れですが、今年のハイライトはアメリカの大統領選でしょう。

 トランプ前政権とは対照的に、バイデン政権下ではウクライナとイスラエルで大規模な戦争が起き、どちらも長期化しています。トランプ氏の自慢は、在任中にアメリカが地域紛争で大規模の戦争にかかわったことのない稀有な政権だったことです。

 プーチン政権は「アメリカ第1主義」を掲げたため、保護主義、超内向き、ナショナリズム、ポピュリズムと批判されましたが、アメリカを間接的にでも攻撃した国はありませんでした。理由は国益最優先を掲げる国に被害を与えれば、報復的行動をアメリカが取ることは明白だからです。

 それは覇権主義の専制主義国家である中国、ロシア、イランなども同じことで、国益最優先で強さを前面に出す国こそ、強い抑止力を持つからです。バイデン氏のようにロシアのウクライナ侵攻直前に「ウクライナはNATOではないのでアメリカは地上軍は送らない」などと愚かな発言を行ったことが、プーチン氏にゴーサインを出す結果になりました。

 ならず者国家が多い世界で、西側諸国は舌戦ですでに負けています。無論、私個人も中国、ロシア、イラン、北朝鮮の超内向き志向には嫌悪を感じますが、これは地球規模の目的と国益追及のバランスの問題であり、国益を軽視した自由貿易であるグローバリゼーションも挫折しました。

 経済は完全にグローバル化しており、国益追及にも世界の安全、安定は不可欠です。今、紅海で起きていることは、エネルギーや物資の安定的供給に深刻な悪影響を及ぼし、各国の経済にダメージを与えています。その意味では世界各地で起きる紛争に無視、無関心は許されません。

 一般的に専制国家は内向きと言われますが、内向きにも様々なタイプがあります。最も悪質なのは自分さえよければいいという自己中心のタイプです。耳障りのいいグローバル化を表向き歌い、途上国支援で大盤振る舞いを見せながら、最終的には債務の罠にかけるのが目的というケースがそれです。

 グローバル化を口にしながら、製造工場を自国内に呼び込む一方、アメリカに積極投資しているように見せかけて、技術を盗み、主権侵害を繰り返すような態度は、内向きの悪い例です。多分、その国民にとっては何も良心の呵責は感じないのでしょう。

 ではいい意味での内向きとは何かと言えば、基本的に自国経済の発展のために世界の安定は不可欠と考え、国益追及と世界全体の利益追求のバランスを取ることです。誰もが平等にビジネスにアクセスでき、公正なルールを守り、自国だけでなく全体の繁栄を追求する姿勢です。

 なぜ、歴史的にアメリカが民主党政権になると外交に失敗する例が多いかと言えば、彼らの本質が自分から世界に向かっているのではなく、世界から自分に向かうまさに権威主義国家と同じ方向を持っているからです。アメリカで民主党支持者と話すと彼らが海外のことにいかに無知かが分かります。

 パリで発行されているインターナショナルナル・ニューヨークタイムズ(旧名インターナショナル・ヘラルド・トリビューン)の知人だった有名なコラムニストの故ファフ氏は私に「アメリカ人の多くは国外のことに関心はないんだ」と嘆いていました。

 中でも民主党は無関心なだけでなく、自己中心的な傾向が強いため、世界の動向に多大な影響を与えるアメリカで民主党が政権を取ると世界は混乱度を増すのが常です。

 このまま、例えばアメリカの雇用情勢が改善せず、経済が不調に陥れば、共和党有利になるのは目に見えており、それはトランプ氏には追い風です。トランプ氏への懸念材料は山のようにある一方、専制国家の指導者は襟を正すのは確実です。アメリカを怒らせれば即座に反応することを知っているからです。