culture code

 グローバルマネジメントや異文化間コミュニケーションの研修を担当していて受講生から言われることは、研修内容は、異文化を抱える現場だけでなく、日本人同士にも役に立つという反応が多いことです。

 それはその通りで異文化とはジェンダーの異文化、出身地の違いも異文化です。人が集まれば異文化の葛藤が生じるのは、何も国籍だけではありません。ダイバーシティ効果が重視される現在、異文化の克服は日本人同士にも必須のスキルとなっています。

 経団連が実施した「企業が採用選考を実施する際に重視する要素」の調査結果では、1位がコミュニケーション能力(82.4%)で、2位が主体性(64.3%)だったそうです。実はこの2つがある人は非常に少ないと言われています。

 つまり、企業が直面する課題から導き出された人材ニーズと現実はミスマッチ状態にあるという事です。原因の1つは教育です。コミュニケーション力を養うには論理的思考、伝える力を養う訓練が必要ですが、日本には欧米にあるようなディベートの授業はありません。

 主体性に至っては、個人の意思や主張を尊重するより、全体の調和を優先する教育を幼稚園の時から行っている現状からは、主体性を身に付ける機会は乏しいのが現状です。さらに社会に出れば、主体性のある言動はリーダーシップのない空気を読むだけの上司から煙たがられ、否定されます。

 日本人は与えられたものを最後までやり抜く、いわゆる自主性はあっても、人とは違った独自のヴィジョンで動く高いモチベーションを持った主体性はないと言われています。企業も主体性を求めながら、自己主張する社員に圧力を加える傾向があるので主体性は育ちません。

 社会はダイバーシティの重要性を説いているのに、若者は異文化に対する恐れや不安が強く、昔は異文化に挑戦する国際人に価値があったのが、今は「面倒くさい」と言います。異文化のハードルを越えた先にワクワクする世界があるという期待感は極端に減退しています。

 そこで主体性を育む方法論として組織が取り組める方法として注目されているのがカルチャーコード(行動指針)です。そもそも西洋はトップダウン、日本はボトムアップと言われ、日本では意思決定も合意形成型が浸透していますが、西洋人の方が圧倒的に主体性があるのはどうしてでしょうか。

 カルチャーコードが推奨する行動指針は、企業側からのトップダウンではなく、従業員たちが意見を出し合って決定し行動するボトムアップ型と言われています。社員が主体となって考え、設計することで、改めて組織の魅力や目的、自分たちの存在意義を再確認できるというわけです。

 そういうと何でも話し合いで決定しているのにと反論する人もいるでしょう。そこで重要なことは個々人に選択権、明確な役割と責任が与えられ、意思決定にも自分が影響を与えられるという企業文化です。さらに個人とチームが明確な目標を共有することです。

 つまり、決して個人が組織の犠牲になることを強いないカルチャーコードを定めることです。そこには個人を尊重する文化、裏を返せば組織に従属するだけのイエスマンを作らないことです。

 この主体性を育てながら、今度は異文化のハードルを越えるスキルを養うことで成果を出せるわけです。空気ばかり読んで主体性がなければ、異文化間コミュニケーションは成り立たないし、異文化のハードルを越えることもできません。

 つまり、マインドセットの大前提として主体性を育むことが問われているわけです。その上で異文化のハードルを越えるマインドがセットされるべきでしょう。個人の主体性を軽視する企業文化ではグローバル人材も生まれません。