日本の円安、株高は、他の先進国の多くが株高と通貨高にある中では例外的道を突き進んでいます。注目は日銀がいつゼロ金利政策を解除するかですが、通常、先進国が足並みをそろえるはずの金融政策で、特にアメリカに従わない日本の判断は、国の事情の違いなのか、それとも日銀が欧米の中央銀行より優秀なのか判断がつきかねるところです。
はっきりしている事は、長年続いたデフレスパイラルからの完全脱却をめざす日本が物価と見合った給与水準の引き上げに、今は政府が旗振り役で労使が同じ目標に向かって努力を続けている最中です。
日本企業の課題は給与を上げるために必要な生産性の向上、効率化、従業員1人1人が生むパフォーマンス向上のための人材育成ですが、長年、全体野球を信じてきた日本企業は、個人の主体性、自律性を育てる土壌が貧弱で、世代交代も進まず、ドラスティックな転換に苦戦しています。
一方、給与が上がっても消費意欲が高まるかは大いに疑問です。たとえば、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「好景気でも浮かぬ米国人、なぜ?」という記事で、アメリカの消費者が好景気なのに消費に極めて慎重な実態を書いています。
これは少子化対策と似て、子供を産むのを控える主因が教育費の高騰にあるといって、教育費の無償化を進めても、少子化に歯止めが掛からないだろうと予測されています。WSJの分析では、アメリカの消費者が消費に慎重な理由について、幅広い社会的・政治的脅威への不安があるとしています。
少子化も同様で、教育費の削減が実現できても、子育てに必要な住宅スペースの確保を考えると住宅価格が下がらなければ、子供は生まない可能性は高いでしょう。子育て環境を改善するには多岐にわたる包括的な支援対策が必要です。
それでも激動の時代にあって、戦争の長期化や気候変動を見ても個人の力の及ばないところで、世界は脅威に晒されています。株価高騰も長期的保証がないどころが不透明感は何一つ変わっていません。
消費欲にしても子供を産み育てたいという意欲を支える土台が世界的に崩れている状態です。そんな中、デフレに苦しんできた日本もそうでない国も、消費傾向を大きく変えたのは、中国が提供する安価な製品です。
日本では100均が完全定着し、収益を上げ、不調なデパートの中に浸食しています。過去に2倍、3倍の価格で買っていた短期的に必要な物を景気が良くなったとか給与が上がったからといって、3倍で購入する人はいないでしょう。
グローバル化が進むことで、経済消費慣習は歪になったと言えます。価格の高いものほど売れたバブルの時代が戻ってくる可能性はもはやないでしょう。今はサービスの差別化で、高品質の物やサービスにお金を使うことと、日常生活コストを抑えることが同時に起きています。
その意味では教育費も同様で、教育費を無償化しても、人間の欲は限りがないので、今度は塾や家庭教師、予備校、さらには私立校に子供を通わせる投資は増え、それに投資できない家庭は結局、負け組になる可能性が高いとの見方もできます。
100均の商品のほとんどは中国で生産されていることを考えれば、100均の定着は中国の戦略成功だったと言えます。おかげで日本人はデフレマインドから脱却することが困難になっています。
私の提案は30年以上前から変わっていませんが、人間生活の基礎であり、家計を最も圧迫する住宅価格を低く抑えることが、最もデフレ脱却に効果的と見ています。そうすれば豊かな生活の追求のために家にいる時の生活の質向上にお金を使うことになり、子供も産みやすくなるでしょう。
フランスで私の周辺で住宅を購入する場合のローンは、平均的に15年です。日本の半分で返済が終わっています。その間は5週間のバカンスを過ごし、問題なく暮らしています。
ただ、少子化対策という極めて国の経済を左右する重大な問題に対する日本の政治家の意識の低さは、それに取り組む予算と担当大臣を見れば、他の先進国よりかなり見劣りする現実があります。
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