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 世界三大投資家の一人、ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが持つ日本の五大商社の株式の同社保有比率が約9%に達したと報じられた。日本株が1989年の最高値を超える上昇に繋がった因がバフェット氏の日本株買いにあるのは間違いないと思われます。

 浮き沈みの激しい投資業界で、バフェット氏の実績は理にかなった銘柄選択にあることは世界的に知られている。それは、内容を理解していること、将来にわたり長期的に好ましい業績が見込めること、経営幹部が誠実で有能な人々であること、魅力的な価格で購入できることとChatGPTは答えています。

 バフェット氏は日本の商社株を買うまで、日本株に手を出すことはないことで知られていました。理由を聞かれて「日本企業について十分な知識がなかった」と答えています。無論、日本人の誠実さは世界的に評価されていますし、短期的成長に終わるギャンブル企業は日本には多くありません。

 これだけ五大商社株を買い、次は金融や保険業界株を注目していると言われるバフェット氏ですが、「将来にわたり長期的に好ましい業績が見込める」企業価値を日本企業に認めていることは注目に値します。つまり、30年前に世界のトップ10銘柄の大半を占めた日本企業が不在な中、復活を確実視しているという事です。

 日本の名目GDPがドイツに抜かれ、世界第4位となったことは、海外に住む日本人としては寂しいものです。慰めは日本を旅行した外国人の日本の評価が極めて高いことで、特に礼儀正しさと清潔さ、安全性、豊かな食文化で文句なく高い評価を受けていることです。

 一方、日本では世代交代が進まず、バブル崩壊で失った自信喪失を未だに引きずる経営者がドラスティックな改革に取り組む意欲もなく、政治家に至ってはお粗末な利権政治から抜け出すビジョンも持たない人間の山です。高い見識を持たない人間に指導者を任せるのは自殺行為です。

 バブル崩壊から10年とはいえ、今から20年前にはアメリカと日本の実質名目GDPを合わせた値は、世界を圧倒し、3位のドイツは日本の半分しかありませんでした。それから8年後には中国に抜かれ、今年はドイツにも抜かれました。

 無論、名目GDPだけで経済力を図るのはナンセンスなことは、中国を見れば一目瞭然ですが、今の日本の株高をどうとらえるかは重要なテーマです。それに海外投資家が見ている日本は正しいのかも知っておくべきでしょう。

 今から10年前、デフレ脱却にあえぐ日本では、専門家から4つの課題が口を揃えたように示されました。1つ目はコンプライアンスを含むガバナンス、2つ目は生産性向上、3つ目は賃金アップを含む人への投資、4つ目はダイバーシティ効果をけん引するグローバル人材育成でした。

 それは今でも変わっていませんが、残念ながら大半の企業経営者は4つの課題を頭で理解しつつも「自分事」として受けとめられず、決定的方向転換を行った企業は少ないと思われます。 

 それに日本を取り巻く環境は、30年前より深刻です。低成長しか経験していない1990年以降に生まれた世代は、好景気は経験していません。超内向きでメンタルは弱く、逆境に耐え、世界に乗り出す精神的強さは過去の日本の歴史を見ても貧弱と言えるでしょう。

 加えて終身雇用の終焉で転職が当たり前となり、自分で人生の荒波を乗り切る必要に迫られ、将来不安は大きさを増し、少子高齢化で老後に備える資金にも不安があります。

 デフレの長期化で、消費者は100均などで安物買いに慣れてしまい、ウクライナ紛争やイスラエル戦争を見て不確実な時代にあることを実感し、経済を押し上げる高額商品の消費は控えられています。

 さらに人の問題は大きく、これは海外からは見えにくいものです。専門家の中には、今後、株価は暴落すると予言する人もいます。中国、韓国、台湾のようにアメリカに追いつけ、追い越せの精神がない日本は、精神的老化が進むヨーロッパと同じようにポジティブマインドを取り戻せない状況です。

 とはいえ、せっかく世界から資金が流入している状況で、企業がやるべきことの優先順位は、安易に新規事業に手を出すよりも、ガバナンスを強化し、生産性を上げ、グローバル人材を育成するために人への投資を増やすことで経営体質の強靭化を行うことだと私は考えています。

 そのためには、年齢や経験にとらわれず、根底から悪い慣習を変える企業改革を担える人材をトップに登用することです。それはプロパー人材ではなく外部からでも構いません。

 特に意思決定に関わる人材の育成は極めて重要です。人への投資において、今重要なことは人材管理のヒューマンスキルを超えて、事業コンセプトを決め、人と予算を組めるコンセプチュアルスキルを30代で習得することです。そのためには若い時から重要なポジションを与えることが重要です。

 末端の兵隊を養成することの得意な日本は今、指導者教育に多くの予算と時間を割くべきでしょう。これが唯一「社畜」という言葉を排除する道だと思います。