
◀デトロイト、GM本社のあるルネッサンスセンターの運命は?
世界的景気後退で製造業の雄、自動車産業が直撃されています。このことで思い出すのは1980年代末、米ミシガン州の要請で州の取材をしていた頃のことです。私はデトロイト中心部にあるルネッサンスセンターの円柱の建物に入っていたウェスティンホテル(現在はマリオット)に長期滞在していました。
私が取材していた頃は、マツダが自動車産業の聖地、ミシガンに工場を誘致した頃で、ジャパンバッシングの最中、米国自動車産業の苦戦ぶりが伝えられていた頃でした。米自動車産業を象徴するデトロイトで、ルネサンスセンターを中心に、町の再生プロジェクトが進む最中の取材でした。
まさに、このルネッサンスセンターが現在、米最大手自動車メーカーGM本社になっており、苦境に立たされるGMの本社ビルが映像に映し出されるたびに、当時を思い起こしています。当時の米国は製造業を捨て、サービス産業、金融業に完全シフトした時代でした。
州政府の役人にデトロイト美術館を案内された時でした。美術館には古代から現代美術まで約65000点の作品を所蔵しており、さすが自動車産業で財をなした町の贅沢なコレクションだと感心しました。アメリカ美術にまじり、ゴッホやセザンヌ、ピカソの作品の展示の前で、作品について話していたら、「彼らは有名なのか」という問いが返ってきました。
案内してくれた2人の役人は、州政府のかなり上の役職の人でしたが、20世紀を代表する画家の名前を知らないのに驚かされました。
当時は、自動車産業の転換期で、デトロイトから富裕層が引っ越し、残された豪邸に黒人貧困層の家族が何世帯も住み、町は荒れ果てていました。しかし、同時に広大な土地を飛行機の窓から眺めながら、アメリカの巨大さ、底力を感じさせられもしました。
ただ、今回は、あの時のような回復力がアメリカの三大自動車メーカーにはなさそうです。再生の象徴だったルネッサンスセンターは今後、どうなるのでしょうか。日産・ルノーグループが買うという選択肢はないと思いますが、その運命は世界経済と深くリンクしているのは確かと言えそうです。