アメリカに史上初の黒人大統領が誕生して注目を集めていますが、危機を救う指導者の資質とは何かということに注目しています。というのも、日産・ルノー連合を率いるゴーン会長や、一昨年春に登場したフランスのサルコジ大統領のことが、頭をかすめるからです。

 

  今は世界的に自動車産業が経営危機に直面していますが、日産はカルロス・ゴーン氏をCEOに迎える前は、巨額の赤字で危機的状況でした。ニコラ・サルコジ氏が大統領になった時、フランスはEUの中ではEU憲法条約の批准に失敗した国として、EU域内で発言力を失い、雇用や移民問題で国は荒れていました。

 

  一方は企業の再生に、一方は国の再生に貢献し、どちらも五十代全般の若さで、指導力を発揮しました。愚かな日本の経済ジャーナリストが、日産の実績が少し下がっただけで、「ゴーン氏の指導力に陰り」とか言っていますが、日産の危機を切り抜けた手腕がどれほどであったのか理解していない証拠です。

 

  両者はフランスで高等教育を受けていますが、ゴーン氏はフェニキア人の血をひくレバノン人、サルコジ氏は、父親はハンガリー小貴族、母親はユダヤ系ギリシャ人と、最初からグローバルな育ちです。彼らの最大の特徴は、両者ともに考えられないほどの行動力を持ち、現場主義だということです。

 

  ゴーン氏は日産のCEOに就いてから、時間さえあれば工場やディーラーを訪ね、現場の声に耳を傾け、セブンイレブンのあだ名のごとく、朝7時から夜11時まで働くハードワーカーでした。サルコジ氏に至っては、1日のうちに数カ国を回ったこともあるほどの行動力です。

 

  神出鬼没とは彼のためにあるのではと思うほどです。思い出すのは一昨年11月、ブッシュ米大統領との初の首脳会談のため、ワシントンに向かう途中、ブルターニュの漁師が漁業政策に抗議しているのを聞き、ブレストに降り立ち、漁師たちと直談判してから、ワシントンに向かう行動をとったことです。

 

  二人とも即決即断型で、まずは社員や国民の前で明確な方向性を示し、スピード感をもって先頭に立って有限実行することです。当たり前のことかもしれませんが、私は危機を救うためには彼らのような決断力、行動力が必要とみています。

 

オバマ大統領は、どこまで、その行動力があるのか注目です。ただ、公約らしいことをあまりしていないので、有言実行の部分は、まったくの未知数です。