フランス大手銀行ソシエテ・ジェネラルのダニエル・ブトン会長が辞任することが4月29日に明らかになりました。ソシエテ・ジェネラルといえば昨年上半期、同銀行の一人のトレーダーが巨額不正取引を行い、フランス史上最大の49億ユーロ以上の損失を出した事件が記憶に新しいところです。
仏メディアは、ブトン氏の退職金はないと報じていますが、本当なのか疑わしい気もします。不正取引事件は現在も係争中ですが、ブトン会長は事件後の昨年5月、最高経営責任者(CEO)を引責辞任しています。当時、サルコジ仏大統領が辞任を促す発言をしていたことを思い出します。
ブトン氏は、自分こそがソシエテ・ジェネラルを欧州の一流金融機関に育て上げたとの自負もあり、会長にとどまっていました。今回の退任は、同銀行及び従業員を社会的批判から守るためと説明していますが、会長の椅子に居すわったことに対しては、各方面から不快感が表明されていました。
とにかく、同銀行は、世界的金融危機の中、公的資金を受け取りながらも、幹部へのストックオプションによる巨額報酬を準備していたことが発覚し、批判された銀行です。不正取引事件は係争中で、ブトン氏は会社の関与を一貫して否定していますが、起訴されたトレーダーは上司の関与を主張しています。
フランスの元トレーダーで、投資会社を経営するある人物は、マスコミの取材に対して、「現在のトレーダーにモラルなど存在しない」と言い切っていました。この事件で思い出すのはアメリカ史上最大の倒産となったエンロン幹部の狂気にも近いモラルを逸脱したビジネス感覚でした。
昔から金と女は人生を狂わせると言いますが、巨額の金を目の前にすれば、人間の感覚が狂ってしまうのは、今も昔も変わらないということでしょう。恐ろしいのは、本人に自覚症状のないままにモラルが失われていくことでしょう。巨額の金を手にして堕落しない人間はいないことは歴史が証明していますが。