イタリアのベルルスコーニ首相は、72歳という年齢にもかかわらず、18歳の雑誌モデルとの不倫が話題となり、これを知った52歳の妻ベロニカさんから離婚を突きつけられ、世界中の人が注目しています。ちょっと常識では考えられないことですが、イタリアを知る人にとっては、それほど特殊なことともいえません。
数年前、英BBCにイタリアの政府高官の妻になっている英国人女性が登場し、イタリアのモラルは他の欧州諸国とも、相当異なっていることを語っていました。私の友人のイタリア人のエミリオも、ベルルスコーニのファンです。彼にスキャンダルが持ち上がる度に、エミリオは解説してくれます。
たとえば、長年高い支持率を保つベルルスコーニ氏は、不正会計処理でかつて被告席に座ったこともあり、5年前には、「税率が(高額所得者に適用の)50%以上なら、人々は『脱税しても道徳的に認められる』と考えるものだが、これが33%だと、支払い義務を感じる」と、脱税を容認するような爆弾発言をしたこともあります。
友人のエミリオは「イタリア人は、うまく脱税して金持ちになった人間を『うまくやった。偉い奴』と評価するのさ」と解説します。ちょうど、スピード違反や飲酒で数十台に1台の確率で捕まる人間を「運が悪い」という感覚で、法を捉えているのでしょう。法より人間が先という考えです。
そういえば、約20年前、日本で消費税が導入された頃、東京大学経済学部の貝塚啓明教授(当時)から、「間接税は、イタリアのような国民が税金を払いたくない国で発達したものだ」という話を直接聞いたことがあります。あまりに歴史の長いイタリアでは、そのモラルも熟しきって理解不能になっているのかもしれません。
北海道・洞爺湖サミットの時、首脳の写真撮影の後に、建物の窓越しに女子高生が手を振る姿に答えてベルルスコーニが笑顔で手を振りながら、サルコジ大統領の腕を引っ張り、一緒に手を振るよう薦める場面がテレビに映りました。離婚再婚を繰り返すサルコジ氏ですが、さすがにベルルスコーニの不純な動機を感じて、逃げて行った姿が忘れられません。