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◀フランス第一の景勝地、モンサンミッシェル

 

フランスではパリに次ぐ観光地、世界遺産にも登録されているモンサンミッシェルの日本語版ガイドブックを監修したことがあります。当地のウエスト・フランス社の依頼でした。フランス最古の新聞と言われるウエスト・フランス社は、フランス西部を網羅しており、観光ガイドブックも多く出しています。

 

そのモンサンミッシェルは、世界遺産ということもあり、多くの有名写真家が被写体にしています。海の中に忽然と浮かび上がる僧院の景観は、景勝地にふさわしいものですが、その撮影をアメリカの月刊誌に依頼されたことがありました。

 

例によって、モンサンミッシェルと草原で草を食む羊が一緒になっている風景をというお決まりの風景の撮影でしたが、実際に撮影してみると、想定外の大変さがありました。中判カメラのハッセルを抱え、三脚を担いで撮影に臨んだわけですが、実は、その機材を持って走ることになるとは思いもよりませんでした。

 

友人のフランス人に助手を頼み、三脚を立て、雲の動きなどを見ながら、のんびり撮影していたら、数百メートルの背後から大声で叫ぶ声が聞こえました。振り返ると友人が「ヤバいよ」と慌てた様子です。よく聞いてみると「また、勝手に俺の土地に入りやがって、出て行け」というものでした。

 

見ると、髪ぼうぼうの男が、三メートルを超える長い棒を片手に猛然とこちらに向かって走ってくるではないですか。友人はかなりパニック状態で、「逃げよう」と叫んでいるのですが、こちらは、この機を逃すと次の機会がいつになるか分からないので、三脚の位置を変えてさらに数枚撮影しました。

 

その後、三脚にカメラを装着したまま、カメラバッグは友人が持って、真剣になって走り、なんとか逃げることができました。見ると男が棒を振りながら「ここで撮影するな! 何度言えば分かるんだ」と叫んでから、元いたバラックの方に帰っていきました。

 

聞けば、彼は羊飼いで、べつに地主ではないらしく、ただ、一般の人が羊を触ったりするのが気に食わないらしく、実際に羊泥棒の被害もあったようです。結局、目的は達成しましたが、実はその周辺の羊飼いの歴史は、千年以上前から存在していて、その羊飼いに追われたのはいい思い出にもなりました。