「マルグリット王女」パブロ・ピカソ 1957年
改装後のパリ・グラン・パレ・ナショナル・ギャラリーで、「ピカソと巨匠たち」展(09年2月2日)が開催中です。同展覧会では、ピカソが尊敬する偉大な先達たちの傑作も同時に展示しながら、ある時は彼らの作品を取り入れ、ある時は破壊した過程を辿る企画展です。
ピカソが天才である証拠は、バルセロナにあるピカソ美術館にある少年期の数枚の作品からも認められますが、ピカソは成人するや、何年間も巨匠たちの傑作の模倣を試みています。
それも、ある様式に影響を受けてというよりも、多様な作品を模倣しており、今回は、模写にも使われた過去の巨匠たち、たとえば、エル・グレコ、ゴヤ、ティツィアーノ、レンブラント、ベラスケス、ゴッホ、ドラクロワなど2百展にのぼる作品が展示されています。
ピカソの作品だけでも相当な額ですが、集められた作品に対する保険会社の見積もり総額は約二千八百億円、同展覧会の予算、六億四千万円の大半が保険金に費やされたそうです。
さて、問題はピカソが、これらの偉大な先達たちの作品をどのように見ていたのかです。
インスピレーションを得るためだったのか、筆使いや色彩、絵の具の使い方など、技術的なものを吸収するためだったのか。それとも歴史に名を残した巨匠たちを超えるために、彼らの作品と向き合ったのか。
画家ならば、自分がたどり着いた様式を何度となく崩して、新しい境地に進む作業に苦しむものです。それがピカソの場合は、巨匠たちの手によって歴史に残こされた完成度の高い作品を壊し、超えていく戦いがあったようにも見えます。
今回の展覧会の開催は、ピカソ美術館、ルーヴル美術館、オルセー美術館が共同で開催する大規模な展覧会で、予算も破格です。その意味でピカソに最大の経緯を払っているとも言えます。
本展覧会については、11月号の新美術新聞に評論を書きました。