友人のフランス人欧州議会議員が、イランの核開発問題での日本の対応について電話をしてきました。彼は日本、韓国、中国のみならず、北朝鮮にも特使として送られたことのある人物です。彼とはイラン問題について何度か話したことがありますが、私の持論に近い意見を彼は持っています。
日本のメディアは、今回の国連総会やG20金融サミットについて、鳩山フィーバーばかり報道していますが、実は主要国は水面下で重要な課題に取り組み悪戦苦闘していました。それはイランが核爆弾製造を可能にするウラン濃縮が行える第2の核施設を建設中であることが明らかになったからです。
新しい核施設は、テヘラン南西のイスラム教シーア派の聖地、コム近郊の軍事施設に作られており、米国が数年前から監視を続ける中に、核施設であることに確証を得たものです。国際原子力機関(IAEA)も今月21日、イランから書簡で「新たな燃料濃縮試験施設を国内に建設中」との通知を受けました。
G20金融サミット中、米英仏首脳が緊急記者会見し、オバマ大統領は、国連が今回全会一致で合意した「核のない世界実現」に対する「正面からの挑戦」と批判、軍事制裁も排除せずの強硬姿勢を打ち出しました。ブラウン英首相も「厳しい制裁を行う準備がある」と述べ、サルコジ仏大統領は「今年末までのイランが誠意を見せなければ、厳しい制裁を課すだろう」と語っています。
イランの核開発問題は、英国、フランス、ドイツが交渉を進めてきました。10月1日の関係国会議では、国連安保理常任任理事国とドイツがイランとの交渉を行うことになっています。この問題で、頭が痛いのが常に常任理事会で制裁決議に棄権や反対をする中国とロシアです。
今回の国連総会と金融サミットの裏側では、オバマ大統領始め、英仏独首脳が中国とロシアの説得に心血を注いでいたわけで、この問題は経済危機問題と肩を並べる深刻かつ重要な問題だったわけです。ところが、そこに日本は一切関与していませんでした。
友人の欧州議員は、その理由を聞いてきたわけです。彼は唯一の被爆国で、核を保有しない国である日本が、イラン問題にまったく関与しない態度に非常に強い違和感を持っているのです。日本はイランから大量の石油を買っていることや、国外での軍事行動には一切関与しないという方針が、イラン問題を無視する主要理由になっているように思われますが、この態度こそが国際社会での日本のプレゼンスを極端に弱めている原因になっているわけです。
日本同様、第2次大戦の敗戦国で悪の枢軸国と言われたドイツは、イラン問題で国連安保理常任理事国と足並みを揃え、存在感を示しています。核のない世界実現の先頭に立つべき日本が、イラン問題で弱腰どころか関係することすら避けている態度は国際社会に不信感を与えるだけです。これでは安保理常任理事国入りなど夢の夢です。