
ブラジル・サンパウロでの財務相・中央銀行総裁会議(G20サミット)も閉幕し、15日のワシントンでの金融サミットの行方が注目されています。EUは、IMF改革を柱としたEU提案を準備中ですが、サンパウロのサミットでカナダが「こんな危機状態で、IMFの本質論に踏み込むべきではない」とEUの動きを牽制しています。
これは、規制や監視強化を柱とするEU提案を警戒する米国の側面支援とも取れる発言です。一方、今回の金融危機で最も被害を受けた欧州としては、この機にアメリカ主導の金融資本主義に対して、新たな金融システム構築に向かって主役を務めたいところです。
EU内で浮上した構想は、英国のブラウン首相によってもたらされたもので、従来、規制緩和を推進してきた同首相の今回の構想に「豹変した」との批判もあります。それは、いわゆる新ブレトンウッズ構想という奴です。
第二次大戦後の米国の経済覇権を決定づけたブレトンウッズ会議は一九四四年に行われ、ドル本位制やその後のIMF、世界銀行の創設に繋がりました。そのブレトンウッズ体制と重ね合わせ、新ブレトンウッズ体制の構築をワシントンで話し合いたいと言うわけです。
国際金融機関の体制見直しや、信頼性を失った金融市場の建て直しという意味では、対策は急を要しますが、本質論となると意見がまとまる可能性は薄くなってきます。
米国主導の金融資本主義に批判が集中する中、米国主導を本質的に改めたいのは、実は英国ではなく、フランスやドイツです。つまり、新しい世界の枠組みを描きたいサルコジ仏大統領が、ブラウン首相のアイディアに飛びついたというのが本当のところでしょう。
EU提案はIMFが、世界金融システムの安定と信頼回復に「主要な責任」を担う機関となるのが主眼です。そのIMFのトップ、ストロスカーン専務理事は、元フランスの経済・財務相で、フランスの息のかかった人物です。おまけに欧州中央銀行(ECB)もフランス人のトルシェ総裁が牛耳っています。
そしてEU議長国もフランスです。常に世界を仕切りたいフランスにとっては、絶好のチャンスの時ということになります。国際問題で主導権を握ることが最大の国益に繋がるというフランス外交は、どこかの国とは正反対のようです。
そこで思い出すのは、伊藤博文がドイツ初代宰相ビスマルクに会見した時に話で、伊藤が「アメリカとの交渉で世界のルールを知る重要性を学んだ」と告げたのに対し、「それは違う。世界を支配する者が世界のルールを作るのだ」と言われ、感銘を受けたという話です。無論、その考えが日本をミスリードしたわけですが。